生活の折り目、折り目の年中行事の慶事には餅がつきもので、各家では餅を搗くことが慣習となっていた。正月に神仏前に供える鏡餅や雑煮用の餅は、前年の暮の二八日に搗くのが普通であった。正月の雑煮は新しい木の桶で汲んだ若水を使ってつくる。三ケ日は雑煮で新しい年を祝う。一一日の蔵開きには正月に神仏に供えた鏡餅を雑煮やお汁粉に入れて食べる。一四日は寒餅を搗き、一六日にはまゆ玉かきといって、おしら様に供えた餅を入れて雑煮をつくる。塞の神の日には餅を焼いて無病息災を願う。三月三日の節供には赤、緑、白の三色の餅を菱形に切って供え物としたり、春秋のお彼岸にはぼたもち(オハギ)をつくり墓参をした。四月八日の花祭りには草餅を、五月の節供には柏餅を食べた。七月のお盆にはぼたもちを仏前に供えた。一〇月下旬の亥の日には、「亥の子(イノコ)の餅」を食べる風習もあった。一二月一日は午の正月でカワビタリ餅を搗き、また、ぼたもちを食べた。
その他、生まれて満一年目に「誕生餅」、「しょわせ餅」という儀礼がある。茶わん程度の一升餅で「ブッツエ餅」と呼んでいた。また、餅をアラレにしてオコジョのオチャウケにした。このように、餅は人々の生活に欠かすことの出来ないものであった。