一 若い人の交際

108 ~ 109 / 241ページ
 男子は二七歳~三〇歳、女子は二〇歳~二五歳が婚姻の適令とされていたようであるが、青年男女は結婚までの間は農作業や養蚕の仕事の貴重な労働力であり、日常は各家の仕事に従事していた。特に、女子の場合は家事の仕事や機織りの仕事などもあり、昼間からのんびりできる状態ではなかった。したがって、祭礼などの日には自由に公然と交際はできるが、日常は男性の「ヨアソビ」による交際が多かった。
 特定の若衆宿と呼ばれるような存在はなかったが、男性は夜になると商店を溜り場として集っていた。多くの溜り場は駄菓子屋で、自然と男性が集るようになりお茶を飲みながら雑談するのだが、時には娘のいる家をえらび、「今夜はあすこへ行くべー」と相談して四~五人ででかけた。家庭的には現代よりきびしかったが、若者が気軽に立寄れる家が多かった。若者が訪問すれば喜んで迎えてくれ、お茶を御馳走してくれたようで、野心のある若者はお菓子を持参して雑談に花を咲かせた。たいていは親も一緒で、冬などは桑の木をたきながらイロリの火を囲んで一二時頃まで話をしていることもあった。
 ある古老は機屋さんには若い子がいるので、たまにはひやかしに行ったそうである。仕事場に入ると主人に叱られるので、機を織るのを外からのぞき込み、娘をかまうのが楽しみの一つであったと述懐されていた。
 このような夜遊びから恋愛へと発展し、結婚へと進んだ例(「ナレアイ」)は極めて稀有であり、若者の昼間の労働のレクリエーション的性格が強かった。また、夜遊びは村内だけでなく他村にも遠征した。祭礼などの日は絶好の機会であり、中には縁があって交際を続ける若者もいたが、二人が逢うことを「デアイマチ」と呼んでいた。