二 婚姻の契機

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 現代では恋愛、見合などを契機として、個々の意志が充分尊重されて婚姻を結んでいるが、明治、大正の時代では男女が適令期になると親戚や世話好きの人が嫁をさがしに歩き婚姻を整えた。家と家との結縁という発想によるもので、親が良ければ無理にでも押しつけることもあった。中には婚礼の当日まで夫や嫁の顔を見たことがないという人もいた。したがって、正式な見合いという機会がなく、婚姻の対象となる娘が昼間機織りや糸とりをしている所を男性にみせたり、また、商売などにかこつけて娘の様子を見に行く程度であった。間に立つ人が殆んど両家の様相を熟知していたので、遠方の娘をめとる時でなければ正式な見合や御対面はしなかった。