三 ハシワタシ

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 適令期の男女がいる家へ話をもってゆき、婚姻を推進する人を当時「ハシカケ」と呼んでいた。親戚や近所の世話好きな人がこの任にあたった。男女のそれぞれの家からでることもあったが、一人で大役を果す人もいた。実際に両家の仲介に入る人で正式の「ナコウド(媒酌人)」が決定するまでが役目とされているが、中にはそのままハシカケがナコウドに移行することもあった。このように、ハシカケは婚姻を整える重要な役目で、婚礼後も両家との交際関係が続けられるのが通例であった。なお、ハシカケの努力で婚姻の話がまとまっても、当時は両人の交際がないのが普通で、婚礼の当日まで一度も逢わなかったという人もいる。ある古老は婚約者を大師様に誘おうとしたら兄貴に叱られたといっていた。