七 婚礼・披露宴

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 婚礼はオクノマ、ツギノマ、ザシキのふすまを取り払い祝宴の席が設けられている。当夜は「ヒトザシキ」といって、出席者は婿、嫁の兄弟姉妹、親戚の人や組合、講中、近所づきあいの代表が参加するが、両親が出席しない所もあった。上座には両家のナコウドが床の間を背にして位置を占め、婿、嫁とその関係者は両側に分れて座る。
 婚礼は三・三・九度の盃事で始る。小笠原流の礼式に則った式であるが、雄蝶、雌蝶の男女の子供が燭台を8の字に結び、盃事のお酌をする。嫁から婿えと盃が移ってこの式が終る。次ぎは親子、兄弟の盃固めがあり、親戚の盃固めが終った後、嫁を受けとりましたという受けとり盃で儀礼が終る。次いで披露の宴に入るが、この宴の司会役を「オショウバン」と呼んでいた。宴の出来不出来はオショウバンに全てがかかっているので、なかなかの大役であった。賑やかに座もちの出来る人が親戚や近所づきあいの中から選ばれるのが普通であった。
 お吸物、刺身、野菜の煮しめ、酢の物などの御馳走とオショウバンの司会で宴が進められるが、明け方近くまで続けられるのが通例であった。宴会では歌も賑やかであったが、市内特有の歌はなく、甚句が多く歌われていた。おひらきの時期をきめるのがナコウドであるが、会の進行状態を見きわめて終宴とした。披露宴が終ると嫁はお客様全員にお茶をついでまわり、ブッセエぼた餅を出すのが普通であった。客が折詰めの引出物をもって帰宅するのを見送り婚礼の第一段階が終る。
 婚礼の翌日から嫁は婿方の親戚か近所づきあいの女性につられて、婚礼衣裳で半紙一帖をもって、講中、組合、近所づきあい、親戚、神社やお寺に挨拶に回るのが通例であった。
 翌日の夜は親戚、近所づきあい、友人などを招いての祝宴が開かれるので嫁は同席して酒をついでまわった。また、手伝いの人を集めて御馳走する「アトザシキ」もあり、婚礼後の数日は祝宴の連続であった。
 この祝宴の時、嫁入り道具を表座敷に飾り、衣裳類をタンスから出しておくのが通例であり、近所の人は嫁の持参したものを見にきて、今度来た嫁の噂話に花をさかせた。