祭壇から棺がおろされ最後のお別れをするが、それがすむと再び棺のフタをして、近親者の手で石をもちいて釘をうちつけ、棺の上に生前着用していた衣裳をかける。出棺に際しては棺をサラシの布で結び、四人の穴番に担がれて玄関から出棺するが、参会者を含めて葬列を整えて墓地に向う。
施主は黒の紋付きに羽織、袴、白足袋に草履をはき、編み笠をかぶるという装束で位牌を持ち、鐘たたきを先頭にして墓地に行く。鐘たたきは最近に葬式を出した家の主人がつとめるのが普通であった。葬列は各村によって異っていたが、白張提灯、旗、六道ローソク、棺と続き、組や講中の人がこの役を担当した。男子は羽織、袴に黒の紋付、女子は白無垢の着物の正装が一般的であった。大正時代の末頃から女性の衣裳に黒の紋付が用いられるようになった。
寺へ到着すると本堂の前庭で右回りに三回まわり墓地に向う。墓地では住職の読経があり、死者に引導をわたして棺を埋葬する。土まんじゅうをつくり、上に青竹を割ったのを用いて三股に組み合わせて立てると、埋葬場所の周囲に竹竿をめぐらし、シヤバグネという柵をつくる。持参した白木の膳を供え、白張提灯や旗を立てて飾り、線香をたて焼香をする。
葬儀が終ると参列者一同が葬家に戻るが、帰ってくると、あがりかまちに餅を搗く「タチウス」が用意してあるので、そこに腰かけて手足を洗う真似をして塩花でお清めをする。葬家の人はお布施や遺品を寄進するために寺参りに行くが、死者の生前着用していた衣服も寺に寄進した。現代ではこの風習がかけむく料(掛無垢=棺の上にのせる着物)として現金を包むようになっている。
野辺送り(榎本武氏提供)