七 葬儀後の行事

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 葬家の祭壇が片付けられ、位牌と十三仏の軸がかけられ、壇仏いの回向をする。葬列に参加した人達がそのまま葬家に残って食事のもてなしを受ける行事で、御飯、ソバ、がんもどきの煮付け、野菜の煮付け、味噌汁などの精進料理と酒が出た。穴番は一番の主役なので上座に位置するのが普通で、また、棺を結んだサラシの布をもらえる権利があり、穴番人達はそれで褌をつくっていた。引出物には打菓子や万頭などのお菓子類が多かった。
 壇仏いの回向が終ると講中や組の念仏講の人が集り十三仏の掛軸の前で伏鉦をチャンチャン叩いて、「ナムアミダブツ」を唱えた。福島の広福寺の白川宗雪師によれば故小川伍助氏が昭和初期に記した十三仏の唱名は左の通りである。
  南無ふどうめいおゝさま(二回くりかえし以下おなじ)
   南無あみだいあんぶつ(一回以下おなじ)
  南無しやかによらいさま
   南無あみだいあんぶつ
  南無もんじゅだいぼさつ
   南無あみだいあんぶつ
  南無ふげんだいぼさつ
   南無あみだいあんぶつ
  南無じぞうおんぼさつ
   南無あみだにょらいさま
  南無あみだいあんぶつ
   南無あくしにょらいさま
  南無あみだいあんぶつ
   南無だいにちにょらいさま
  南無あみだいあんぶつ
   南無みろくだいぼさつ
  南無あみだいあんぶつ
   南無やくしにょらいさま
  南無あみだいあんぶつ
   南無かんぜおんぼさつ
  南無あみだいあんぶつ
   南無せいしだいぼさつ
  南無あみだいあんぶつ
   南無あみだいあんぶつ
  南無こくぞうだいぼさつ
   南無あみだいあんぶつ
  南無ぜんこうじによらいさま
   南無あみだいあんぶつ
 死後七日目の初七日には寺で読経があり、卒塔婆を墓所にたてる。この日も念仏講の人が集り供養をしてくれる。死後の四九日目は所謂四九日で忌明けとなり、葬家の家族は平常の生活に戻る。四九日の行事として、家族、親戚の人が墓参して埋葬時の飾りものなどを取り払う。この日始めて位牌を仏壇に納める。血縁者に位牌分けや死者の遺品を分ける「形見分け」をする。夜には講中、組の人達が供養に参加し、ソバ、野菜の煮付けや酒のもてなしがある。
 この過程を経て葬家の喪があけるのである。
 なお、四九日の忌明けは仏教の説では死後四九日目で次の世に生まれかわるとされているからであり、俗信では「死者の魂が四九日間屋根のまわりを飛んでいる」「四九日たってやっと一人前の仏になる」などがある。
 喪に服している期間は神社の参拝を遠慮したり、神棚に半紙をはったり、祭礼にも参加しないというように、神事に関する禁忌が比較的多い。一般的には祝い事を遠慮する風習が多かったようである。