A 煤払い

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 現代では年の暮になると、衛生上の目的から特定の日を大掃除の日として実施している所もあるようだが、この煤払いの行事は一年中の家の内外の煤(カマドやイロリを使用していたため)やゴミを家族全員で除去する日である。特に、神棚を下ろして掃除をすることが重要であり、幣束、護符などを取り去り、神器をみがき新しい年の神様を迎える準備をする。なお、幣束やお礼や護符は川に流したり、塞の神の行事のとき正月のお飾りといっしょに燃やした。また、新しいお礼は一二月三〇日頃までに神職が配布するところや、世話人がもらい受けて各家に配布するところもあった。中には神社に詣でて受けるところもあった。竹の竿に笹の葉をつけたほうきを作り、煤を払ったので煤払いというが、宗教的色彩の強い行事である。夕方になると神棚に供え物と燈明をあげてお参りし、家族はソバ、五目飯などでこの行事のしめくくりをした。一年の汚れを払い、新しい年を迎える準備の行事で、煤払い正月などともいわれ、古くは一二月一三日に行われるのが通例であったが、明治、大正の時代では各家により日取りに差異があるようになった。拝島の榎本亀太郎氏の『農事日誌』によれば、大正二、三、四年では一二月二五日、二二日、二八日と一定していない。二〇日以後の比較的閑な日があてられていたようである。