D お飾り

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 今ではこの風習も形式化し、年の暮の歳の市などで買い求めたお飾りを、玄関口や床の間に飾って新年を迎えているが、一時代前では各農家で新藁を用いて注連繩や輪飾りをつくるのが普通であった。注連繩は供える神様によって結び方が異り、また、輪飾りは橙やゆずの葉を麻で結んでつくっていた。行商の人がお飾りを売りにくることもあったが、多くは自家製のお飾りを神棚、仏壇、荒神様、便所、蔵、物置、井戸、屋敷神などに供えた。また、玄関口には輪飾りをつけて新春を迎える準備をした。お飾りは一夜飾りといって大晦日に飾ることを禁忌としていたので、三〇日以前に飾るのが普通であった。
 門松飾りは松を中だちとして年の神様を迎えるという信仰から始ったものであるが、家によって差異があり、飾らない家もあった。飾る家では玄関口の両側に一対の松を立て、シテ(四手)を下げた小さな輪飾りをかけた。門松もお飾り同様に大晦日に飾るのを忌禁として、三〇日以前に飾るのが普通であった。