この月も五月に引続いて農蚕の仕事で多忙な時期であり、村全体に共通する行事類が殆んど行われていない。養蚕を営んでいる家では、五月の末頃に熟蚕となった蚕を上簇する作業を始めるのが六月初旬であり、この作業が終ると無事に上簇出来たことを祝って、各家では家族や雇人が揃って上簇祝いを行う。六月の初旬から中旬にかけてのまゆかきの仕事が終ると、養蚕は一段落するが、麦の刈入れの仕事が続き、さらに麦コキや棒打ちの農作業が続く。農家では麦刈りが終ると、農耕生活の折り目として、「鎌洗い」などの農具を中心とした儀礼があり、どじょう粥を食べた。
なお、六月一日は多摩川の川開きで、鮎解禁の日であり、釣り人で賑わいをみせた。市内の人々は鮎釣りをしたが、中神では多くの人が五月三一日の夜に河原に出かけ、解禁と同時に投網をうったりして鮎魚をした。