手仕事、手習いが上達し、手の病いが治癒するなど、手に関することに御利益があると信じられていた「お手の観音様」と呼ばれている信仰があった。毎年秋になると柚木村大塚の清鏡寺から観音様を納めた厨子が、二人に担がれて廻村してきた。厨子にはお札、鉦、奉賀帳の入っている引出しがついていて、まわりは手芸、習字、絵、縫物で飾られていた。郷地、福島、大神、田中、拝島へと廻村するのだが、一個所に四日間程厨子を安置し、宿の門口にお手の観音様と書いた赤い幟を立て、鉦をたたいて近所中に知らせ、信者を集めてお金や米を喜捨してもらい、お札を渡していた。昭和二四年頃までこの風習が続いていたが、現在では途絶えてしまっている。