蚕室関係用具

1.たてじ(差段・蚕棚ともいう)
 木の枠に竹ざおを12段ほどさして組みたてる。一室で片側に48枚両側で96枚ぐらいのえびらをのせて、立体的に蚕を飼う。-室にたてじ10枚、竹ざお48本が必要となる。


 
2.えびら(蚕かご・エガ・このめともいう)
 竹で編んだ長方形の平らな蚕を飼うかご。これに蚕座紙をしき、その上に網をかけ、給桑や、しりぬき(蚕糞を除く)などの作業をする。

 

 
3.給桑台(蚕くれ台)
 えびらを棚から引出して、この台の上にのせ、給桑、しりぬき、をする作業台で、ひものしばり方で台の高さの調節ができる。

 

 
4.糸だて(蚕むしろ)
 ワラを糸で織ったうすい養蚕用のむしろで、蚕座に敷いた。
 
5.蚕座紙
 茶色の丈夫なハトロン紙(西洋紙)で、大正時代中期ごろからこの近辺では使われ始めた。それまでは糸だて。
 
6.糸網(分箔網(ふんはくあみ))
 蚕座にしく、糸を編んで作った網で両端に竹ひごがつく。大小数種があり、主に3眠以下の小さい蚕に用いる。分箔とは蚕の成長にともない蚕座をわけ広げることで、この作業などに使われる網。
 
7.稚蚕飼育箱(ちさんしいくばこ)
 蚕が掃立後のまだ小さい時、保温と桑のしおれ(乾燥)を防ぐため箱に入れて育てた。木製または一部トタン張りにしたものもあった。えびらと同じように差段に指しておく。

 

 
8.縄網
 蚕が大きくなってから用いる。しりぬき(蚕糞を除く作業)に必要。蚕座にこの網をかけ、桑をくれると、蚕が上にあがる。網の下に残った蚕糞をとり除きすてる。蚕の糞尿で縄網がしめるので、よく陽にあてて乾した。

 

 
9.ロー紙
 1~2眠の蚕が小さい時、蚕座にかぶせ、保温または桑がしおれるのを防いだ。
 
10.目張り用具と紙張(しちょう)
 春蚕期の低温に備え、室温を保つため冷たい風の入らぬように蚕室を目張りする、障子紙、のりなべ、ハケ、など。紙帳は和紙に「渋」をぬって丈夫にした厚紙のシートで、部屋を囲うのに用いた。
 
11.乾湿計(寒暖計)
 自然の気候にまかせていた清涼育時代は必要なかったが、温暖育が広まると、燃料の節約上からも、たえず室温を計り室温と湿度を調節した。我が国では天保十四年(1843年)蚕当計(寒暖計)が作られたという。
 
12.清掃用具(ほうき、雑巾、ちりとり、など)
 蚕室内は清潔に保つ必要があり、特に蚕糞のこぼれをふみつけると床にはりつくので雑巾がけを常におこなう。ワラぞうりは蚕室の必需品であった。
 
13.もみがら焼き器
 稚蚕の時、蚕座を乾燥させるのに、もみがらを焼き炭状にしたものを保存し、ふるいで蚕座にふりかけた。後に石灰を用いるようになった。

 


 
14.毛蚕(けご)ぼうき(掃立ぼうき、羽根ぼうき、とりっぱね)
 蚕の種紙からかえったばかりの蚕(蟻蚕(ぎさん)という)を蚕座に掃きおとす。やわらかいとびの羽根などで作られている。