【修理仕様】

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釈迦如来坐像
(本体)
1.クリーニング(清掃)
▪乾式クリーニング(筆、刷毛等を使用)ののち湿式クリーニング(精製水、エタノール等を使用)を行い、表面の砂塵を除去した。
▪クリーニングと同時に熟覧調査を行い、計画調整をした。
2.剥落止め
▪剥離した表面弁柄漆層や漆箔層は、隙間に媒材(膠水溶液、パラロイドB48アセトン溶液を適宜使用)を注入したのち、表面に化繊紙をあて50℃を限度とする熱コテで圧着し、剥落止めをした。
3.部分解体・樹脂含浸強化処置
▪左手首材を本体から取り外した。接合面に付着する近代の接着剤はアセトンで緩め除去した。
▪左手第5指は、矧ぎ目の緩んだ第2関節より先を取り外した。
▪矧ぎ目の緩んだ後頭部薄材を取り外した。当該部周辺の膠木屎による螺髪修理部は形状不適合であったため除去した。
▪矧ぎ目の緩んだ後頭部髪際の別材矧ぎの螺髪を取り外した。
▪頭頂部の錆びた鉄釘を除去し、割損部材を取り外した。周囲の炭化・粉状劣化した木部は、アクリル樹脂(パラロイドB72アセトン溶液)を含浸し強化した。
▪像内の鉄鎹は錆を除去したのち、防錆処置としてアクリル樹脂(パラロイドB48アセトン溶液)を塗布した。同時に周囲の劣化した木部にも含浸し強化した。
4.損傷部修理・補作・組付
▪左手指の欠失部は檜材を用いて補作した。接合部には木釘の雇枘を入れ、PVAc(中性ポリビニールアセテート接着剤)で接合した。
▪取り外した部材(左手首・後頭部薄材・後頭部髪際螺髪)はPVAcで元の位置に接着した。また、後頭部薄材周囲の螺髪欠失部は檜材およびエポキシ可塑性人工木材(以下、人工木材という)で補作した。
▪頭頂部から取り外した割損部材は、PVAcで元の位置に接着した。周辺の欠失部および亀裂等は、檜の薄材および人工木材で埋め整形した。また、頭頂部から左右側頭部にかかる矧ぎ目の間隙も同様に処置した。
▪像内背面中央の地付の亀裂(干割れ)は、帯状に麻布を貼り補強した(PVAcで接着)。
▪3材矧ぎの底板のうち左右2材は、緩んだ矧ぎ目にPVAcを充填し接着した。外れていた中央1材は同材中央の亀裂に人工木材を充填し修理したのち、像底に組付けた。
▪像底の後補の布貼りは除去した。新たな布貼りは行わなかった(強度上問題なしとした)。
5.仕上げ
▪上記修理部表面はすべて、周囲に合わせた古色仕上げとした。補箔および補彩は修理箇所のみに限定し、他の箇所には施さなかった。但し面部の仕上げについては協議の結果、新たに漆箔を施し、眼部には薄墨で瞳を描くこととした。
(光背)
1.損傷部修理・組付
▪小仏雲座の錆釘は除去し、釘孔には人工木材を充填し形状を整えた。
▪小仏の組付けには直径6㎜の木製丸枘を各1本使用した(上述の錆釘孔等を利用)。
2.仕上げ
▪懸案事項であった二重円相圏帯部の「下地まま」の解釈については、協議の結果「下地漆(黒漆塗り)のまま」とすることに決定し、当該圏帯部は黒漆塗り仕上げとした。また身光中央部は、木地部の墨書(指示書き)に則り弁柄漆塗り仕上げとした(光脚部はその対象外とした)。
▪上記を除く他の表面は漆箔仕上げとしたのち、本体に合わせ古色を施した。
(台座)
1.補作・仕上げ
▪隅足を新補した。
▪中框および下框は弁柄漆塗り仕上げ。総足および隅足は黒漆塗り仕上げ。他の表面は漆箔仕上げとしたのち、本体に合わせ古色を施した。
 
阿弥陀如来坐像
(本体)
1.クリーニング
▪乾式クリーニング(筆、刷毛等を使用)ののち湿式クリーニング(精製水、エタノール等を使用)を行い、表面の砂塵を除去した。
▪クリーニング(清掃)と同時に熟覧調査を行い、計画調整をした。
2.剥落止め
▪剥離した表面弁柄漆層や漆箔層は、隙間に媒材(膠水溶液、パラロイドB48アセトン溶液を適宜使用)を注入したのち、表面に化繊紙をあて50℃を限度とする熱コテで圧着し、剥落止めをした。
3.部分解体
▪矧ぎ目の緩んだ螺髪(正面髪際部)の部材を取り外した。
▪右前膊材および右大腿部の三角材は、矧ぎ目表面に亀裂はあるが部材に緩みがないため、解体しなかった。亀裂には表面から人工木材を充填して整形・補強した。
▪矧ぎ目のゆるんだ差首部は、襟首(首後半部)の亀裂を切開して内部の薄材(矧ぎ目調整のために詰められた複数の薄材)を一度取り出した。溜まった塵埃は除去した。
4.損傷部修理・補作・組付
▪正面髪際左部(額の左上部)の螺髪欠失部(螺髪5個)は檜材を用いて補作した。
▪取り外した正面髪際の螺髪の部材はPVAcで元の位置に接着した。
▪襟首(首後半部)の間隙には、取り出した薄材をPVAcで元の位置に接着したのち、細かな隙間に人工木材を充填して補強・整形した。
▪頭頂部から左右側頭部(左右耳前)にかけて生じた間隙(矧ぎ目離れ)には檜の薄材および人工木材を充填し接着・整形した。
▪像底の後補の布は除去し、新たに布貼り(麻布を麦漆接着)を施した。
5.仕上げ
▪上記修理部表面はすべて、周囲に合わせた古色仕上げとした。補箔および補彩は修理箇所のみに限定し、他の箇所には施さなかった。但し面部および三道部の仕上げについては協議の結果、新たに漆箔を施し、眼部には薄墨で瞳を描くこととした。
(光背)
1.損傷部修理・組付
▪小仏雲座の錆釘は除去し、釘孔には人工木材を充填し形状を整えた。
▪小仏の組付けには直径6㎜の木製丸枘を各1本使用した(上述の錆釘孔等を利用)。
2.仕上げ
釈迦如来坐像に準ずる。
(台座)
釈迦如来坐像に準ずる。