「雨多懸令江維緒(うたけんれいこうゆいちょ)に寄せる一絶(いちぜつ)」 (菅家文草255)

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  雨(あめ)應(ふ)ら不(ざ)るは政(まつりごと)の良(よ)から不(ざ)るに縁(よ)るべし
  唯(ただ)憑(たの)めらくは大般若経王(だいはんにゃきょうおう)
  州官懸吏更相混(しゅうかんげんりこもごもあいま)じりたり
  乙丑(きのとうし)の同年(どうねん)にして鬢(びん)に早霜(さそう)あり
 
 讃岐鵜足(うた)(雨多(うた))郡の長官の江維緒(こうゆいちょ)は雨が多いと言う縁起の良い名前であったので郡も雨多の字を当てて漢詩を一つ作りました。
 「雨が降らないのは、国の政治が良くないからです。旱魃で降雨を頼むのは、だだ、ひたすらに大般若経の験力(けんりょく)に頼るだけです。降雨祈願の修法の場には国府の役人や郡の長官たちが雑然と入り混じっています。その中で江維緒と私は845年(承和12年)の丑年(うしどし)生まれで、彼は鬢毛(びんもう)に白髪(しらが)がちらほらまじっています。」