十一面観音のお姿

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 滝宮の十一面観音像は、内刳(うちぐ)りの全くない檜材(ひのきざい)の一木造りの立像です。頭上には、仏面(悟(さと)りの表情)。正面の三面は菩薩面(穏やかな慈悲の表情)。右側の三面は瞋怒面(しんぬめん)(眉を吊り上げ、口を「へ」の字に結び邪悪(じゃあく)な人を戒めて仏道へと向かわせる、怒りの表情。左側の三面は狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)(結んだ唇の間から、牙(きば)を現(あらわ)し行いの淨(きよら)かな人を励まして、仏道を勧める讃嘆(さんたん)の表情)。後側は大笑面(だいしょうめん)(悪にまみれた人の悪行を笑い滅する表情)などそれぞれ複雑な表情をした化仏(けぶつ)を天冠台上(てんかんだいじょう)に配置しています。十一面観音の本面は、穏やかな表情の中にも口元はキリッと引き締まり、目鼻立ちの整った、秀麗(しゅうれい)でかつ厳しさをたたえたものです。
 また右手は垂下(すいか)し、左手には蓮華(れんげ)を挿(さ)した花瓶をもち、下半身には裳(も)、上半身には条帛(じょうはく)をつけ、天衣(てんね)をまとい、すんなりした姿勢で堂々として気高さを感じさせ、藤原時代初期の特色をよく表現した美しい観音像です。