十一面観音の由来と信仰

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 十一面観音はサンスクリット語で「サマンタ・ムカ」と呼ばれ、その意味は「あらゆる方向に顔を向けたもの」と言われ、本面の顔と十方向に向けられた顔があることから十一面観音と言われています。
 十一面観音を信仰すれば、「現世安穏後生善処(げんせあんのんごしょうぜんしょ)」の功徳(くどく)を授かるといわれ、現世では現世利益(げんせりやく)(病気にかからない・経済的に恵まれる・事故にあわない・人の恨みを受けない…)、を、また来世では浄土に生まれ変われる「四種果報(ししゅかほう)」(臨終では如来に迎えられる・地獄、餓鬼(がき)、畜生に生まれ変わらない・早死しない・極楽浄土に生まれ変わる)の功徳(くどく)にあずかることができるという教えによって、多くの人々の信仰を集め、数多くの十一面観音像が描かれたり、造られたりしました。
 法隆寺金堂壁画(1949年の火災で焼損)の中の十一面観音像が我が国最古のものと見なされております。また東大寺二月堂の本尊も十一面観音であり、秘仏であるためその姿は明らかではありませんが、同寺の年中行事である「お水取り」は、十一面観音に罪障(ざいしょう)の懺悔(ざんげ)をする行事としてよく知られています。

十一面観音立像