千葉市の気温を関東地方の平均気温と比べると、気候にめぐまれ、冬は暖く、夏は暑い日が多くないということができる。一年間を、十月―三月を寒候期とし、四月―九月を暖候期に分けて千葉市と関東地方を比べると次のようになる。寒候期において一日の最高気温が零度以下の日を「真冬日」とすれば、真冬日は関東地方の内陸にあるが、南関東にはない。一日の最低気温が零度以下の日を「冬日」とすれば、海岸から内陸に進むにしたがって冬日が多くなる。千葉市の冬日は三十数日であり、銚子や湘南と同じで、東京よりも一〇日もすくない。また暖候期において一日の最高気温が二五度以上の日を「夏日」とすれば、夏日は東京は一〇〇日もあるが、千葉市は九〇日ほどである。一日の最高気温が三〇度以上の日を「真夏日」とすれば、千葉市は三〇日ほどであり、東京より一〇日もすくない。
千葉市の年降水量は過去一〇年間の平均は一、二六八ミリであるが、昭和三十八年の一、五七九ミリや、昭和三十九年の九二七ミリの年もある。この年降水量はほぼ七〇パーセントが暖候期に降り、寒候期は雨がすくなく乾燥する。暖候期の雨は夏の南東季節風や梅雨・台風でもたらされるが、寒候期の乾燥は「空っ風」といわれる冬の北西季節風による。千葉市は夏の季節風の風下にあるため、安房・夷隅の太平洋岸が年降水量二、二〇〇ミリになるのに比べて少雨地である。この少雨地は東京湾をめぐって関東平野にまでひろがり、関東山脈の山地は安房・夷隅山地と同じように雨が多い。このように東京湾と関東平野は「関東地方における瀬戸内式気候」を示している。
冬の季節風は、乾燥してつめたい空っ風として吹くだけでなく、台地の関東ロームを大空に吹きあげる。秒速一〇メートル以上の風速になれば、台地の空は黄塵万丈となる。台地の村落は屋敷森で農家を囲み、防風林で畑を風蝕から防いでいる。
1―8図 めぐまれた千葉市の気候