第二項 季節風と海陸風

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 千葉市の風向は寒候期と暖候期には正反対になる。これは冬の季節風と夏の季節風が主因であり、これに加えて東京湾海面による沿岸の海風と陸風の交替が副因となっている。
 一月の主な風向は北風又は北西風であり、冬の季節風が強くあらわれる。この風向は二・三月末までつづく。わずかに三浦半島や房総半島の南端で北東風に転じている。四月になると、千葉市付近と対岸の羽田において南風や南西風があらわれはじめる。この南風や南西風は海岸沿いのせまい地帯のみであり、内陸まで吹きこまない。また房総半島の南部や湘南にも南風や南西風が吹きはじめる。しかしそのほかの内陸には北風が主風向であり、海岸と内陸とでは主風向は対照的である。この状態が五・六月までつづく。七月になると、千葉市では南西風、市原市では西風、そのほかでは全面的に南風となり、これら南からの海風が内陸一五キロメートルまで吹きこみ、八月にはますますこの状態が強くなる。十月になると風向は一変して北風または北西風となる。この風向は九月からあらわれ、翌年の三月末までつづく。

1―9図 季節風と海陸風

 季節風が弱い日には海岸地帯には海風と陸風があらわれる。東京湾海面とその沿岸地帯において、日中に海から陸へ吹きこむ風(海風)があり、これに対して、夜間に陸から海へ吹きだす風(陸風)がある。千葉市において、陸風から海風に交替する時刻は九時~一四時であり、その最盛時は午後二時~四時である。また海風から陸風に交替する時刻は午後五時から翌日の午前二時であり、その最盛時は午前三時~七時である。海風の吹きこみは東京より千葉市が横浜と同じように二時間ほど早い。陸風の吹きだしもまた同じである。海陸風の交替時刻は東京湾岸の南から北へおくれるようである。この海風と陸風との交替時に、「弱風」または「静穏」の状態があらわれる。この「静穏」という無風状態は、海陸風の交替時にあらわれるとともに、夜間から早朝にかけての放射冷却による下層大気が安定化することからもあらわれる。「静穏」という無風状態には、大気の逆転現象が発生し、東京湾とその沿岸地帯は密室状態となることが報告されている。
 最近、千葉市を含む京葉臨海工業地帯では大気汚染の公害がはげしくなっている。大気汚染は風向・風速・静穏などの大気の状態と密接な関係がある。一般的にいえば、市原市は寒候期に高濃度の汚染が発生するが、千葉市は暖候期に高濃度汚染が発生している。これは千葉市の風上に汚染源となる工場地帯があることによる。また大気が「静穏」状態のときは、東京湾海面とその沿岸地帯は密室状態となり、京葉工業地帯と京浜工業地帯を汚染源として、広域汚染が発生している。寒候期において、東京・横浜などには都市中心部に高濃度の汚染地域が発生するが、千葉市において、この都市型汚染は現在まではあまりみられない。しかし千葉市の人口増加にともない、やがて都市型汚染が発生する可能性がある。
1―2表 海陸風の交替時刻とその最盛時刻
千葉(1958.5~1969.4 統計)
陸風→海風海風最盛時海風→陸風陸風最盛時
9~14時15~18時19~21時23~8時
9~1214~1617~24~7
9~1114~1617~23~7
8~1214~1618~224~7

横浜(1958~1966)
10~13時14~15時17~22時22~9時
8~1112~1820~241~7
7~911~2022~23~7
9~1112~1820~230~8

東京(1955~1959)
12~14時16~17時19~22時1~9時
10~1314~1821~243~7
9~1113~2124~35~7
11~1416~1821~242~9

(千葉公害研究所資料による)