(一) 斧足類(二枚貝)
ハマグリ・アサリ・シオフキ・サルボウ・イタボガキ・アカガイ・カガミガイ・マテガイ・バカガイ・マガキ(少)・オオノガイ(少)・ヤマトシジミ(少)・オキアサリ(少)・ハイガイ(少)・ミルクイ(少)・アリソガイ(極少)・オオマテガイ(極少)
(二) 腹足類(巻貝)
キサゴ(最多)・ウミニナ・アカニシ・ナガニシ・イボニシ・ツメタガイ・サザエ(少)・アラムシロ(少)・レイシ(少)・カワニナ(少)・ヒダリマキマイマイ(少)・アワビ(極少)・ソデガイ(極少)
2―60図 貝塚から出土する主な貝類
1.ミルクイ 2.オオノガイ 3.カガミガイ 4.ハマグリ 5.ベンケイガイ 6.イタボガキ 7.マガキ 8.ツメタガイ 9.イタヤガイ 10.アカニシ
2―60図 貝塚から出土する主な貝類
1. サルボウ 2. バカガイ 3. オキシジミ 4. オキアサリ 5. シオフキ 6. アサリ 7. マテガイ 8. ヤマトシジミ 9. ハイガイ 10. キサゴ 11. アラムシロ 12. ウミニナ 13. カワニナ 14. トカシオリイシ 15. イボニシ 16. ナガニシ 17. オオヘビガイ 18. ダンベイキサゴ 19. バイ
これらを見ると、そのほとんどが、内湾砂泥性の海岸に棲息するもので、現在の東京湾においても見ることができるものである。
これらの中で、斧足類ではハマグリ・アサリ・シオフキ・サルボウ、腹足類ではキサゴ・アカニシなどが各時代、各遺跡において一般的である。
しかし、これらの貝類がすべて一様に食用に供されたかどうかという疑問の残る余地を生じてくる(註4)。
その中で、中期から後期、特に後期の貝塚において注目されるのが、非常に大量なキサゴの出土である。キサゴは、直径一~二センチメートルの巻貝で、一見、食用としてはあまり適さない、小さな貝である。
このキサゴが、時として、他の貝類を全く含まない、単一種類の貝層を形成している例も見られるほどの出土を示すのである(二―六一図)。
2―61図 キサゴを主とする貝層(加曽利北貝塚昭和37年8月)
更に、その出土の状態においても、時として、その形骸をとどめないほど、こまかく破砕され、それだけが一つの層を形成しているということもある。
このことについては、まだたしかな結論を見ることができないのであるが、キサゴは、時として集中的に、大量に発生することがあるといわれ、また、真水の中へ入れると、殼から出てくるともいわれている。
また、早・前期の遺跡の方が、中・後期の遺跡に比べて、ハイガイの出土量の多いことがうかがわれる。このことは、これらを採集した早・前期の人々の嗜好から、というよりも、当時の水系の特徴に起因していると考えられている。ハイガイは、暖流系の貝類であることが知られている。
また、千葉市内では、その類例を見ていないが、汽水系の貝類で形成された貝塚を見ることがある(註5)。その場合には、ヤマトシジミを中心とした貝層が形成されている。
更に、貝類以外の軟体動物として、頭足類のイカが確認されており(モンコウイカの甲)、それとともに、遺骸を残さないタコの捕食も十分に考えられる。
また、海岸での貝類の採集と同時に、海藻類も採集されていたであろう。