更に、最近の加曽利貝塚の東傾斜面における出土例を見ると(註43)、斜面の中腹に構築された、長径(傾斜方向に対してほぼ直角方向にある)約一八メートル、短径(推定)一四メートルの大規模な長円形の住居址状の遺構の南端に、石棒二本と、縄文後期の異形土器三個(二―六九図右上はこの一つである)が出土し、これらはいずれも、この遺構に伴うものと考えられた(二―八七図)。
2―87図 祭祀的特殊遺構(右,縄文後期,加曽利B式)とその祭祀遺物の出土状態(左)(加曽利貝塚発見)
この遺構の立地・規模・形状、石棒・異形土器の出土状態から、この遺構は、居住のための施設ではなく、多数の人々の集まる集会場と考えられ、そこにおいて、何らかの祭事が行われ、その際の祭器が何らかの事情で残されたものと見ることができよう。