従来、遺跡というものを、その遺跡における遺物や遺構の表面的な状態によって、ただ形式的に、貝塚・集落・包含地・散布地などに分けてきた。しかも、それらを混同したり同格に扱ったりするだけで、それぞれがいかなる行動を意味しているか、その文化的意義や内容については、ほとんど把握されていない。
ここでは、このようなまぎらわしい分類は避け、まず遺跡全体を、本質的に混同してはならない集落と、それ以外の遺跡とに区別する。そして、集落以外の遺跡の中には、生産地、製作地、交易地などが含まれることを予測し、これらを一括して、いま仮りに「露営地」と呼ぶことにする。
すなわち、「露営地」とは、当時の人びとが集落以外の場所で、生活に必要なさまざまな活動を行った痕跡である。これは集落に比べるならば、本質的に臨時的、偶発的、任意的なもので、広い意味のキャンプ(camp)である。
しかし、現在のところ、このような観点で、一つ一つの遺跡の意義・内容を具体的に把握するまでに至っていない。その「露営地」の解明は、残念ながら今後の調査・研究にまたねばならない。それまでは、集落以外の遺跡は、あくまでも性格不明の遺跡として、ここでは触れないことにする。