b 方墳の様相

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 方墳は現在まで確認されたもの一七基を数え、その分布の様相は市内各地に散在しており、しかも群集せず、一基ずつ単独で存在する場合が多い。ただし、例外もあり、大木戸町にある大野古墳群には、一辺二〇~三〇メートルの方墳が四基、東西に並んでいる。後期の前方後円墳と方墳の分布(二―一一六図)をみると、それぞれの分布の範囲が重複していないことがわかる。つまり花見川流域・宮野木本谷、または葭川上流など前方後円墳の稀薄な地域に方墳が存在している傾向がみられる。

2―116図 千葉市周辺における前方後円(方)墳と方墳の分布

 方墳の発掘調査例はきわめて乏しく、内部主体や編年序列については不明な点が多いが、市内青葉町に所在する荒久古墳は、截石の横穴式石室をもつものとして有名である。この古墳は、昭和二十六年、市誌編纂のための調査が行われ、明治年間の発掘で掘り残したと思われる琥珀製棗玉(なつめ)や鉄製の馬具片が出土した。石室の構造上の特長としては、羨道がきわめて短いことがあげられ、寸法は唐尺を用いていることから、築造年代は奈良時代に降るものであろうと推定されている(註4)。