中世城郭は、その本来の機能性と地理的立地条件から、選地がかぎられ、その存続期間が不定で、後世における再三の活用によって、重複と改築がはなはだしい。しかも、防衛上の当然の条件として、それぞれが特異性を競うために、その型式分類さえ、きわめて困難な場合が多い。
したがって、伝承や文献にのみ依存している限りでは、中世城郭の本来の型式とその編年の把握は到底おぼつかない。前に述べた大椎城址及び立山城址の遺構形態をみて、直ちにその所属年代を判定しうる的確な基準は、いまのところどこにも見当たらないのである。
しかし、いまここで、これまでの城郭研究の成果の中から、中世城郭の型式分類とその編年に関するいちおうの把握をしておく必要がある。特に、実際の城郭遺構の現地測量によって、実証的な成果をあげている小室栄一(註12)の見解をここに整理しておきたい。