同表には、工作場として三工場の名がみられるが、それは、佐倉町の靴・織物工場工人二五名、匝瑳郡の綾縞(あやしろぎぬ)・白木棉工場工人二五名、海上郡の銚子縮工人二五名であった。
千葉町関係では、度量衡製作人一人となっている。この度量衡の製造は、明治六年当地に県庁がおかれて後、最初に発生したもので、以後、当地区は、県内唯一の度量衡生産地域としての地位を維持することになる。
次に、統計表より特有産物の中の工業製品をみると、五―一九表に示すとおりである。
地域 | 特有産物(工産関係) | |
千葉 | 製茶,菜種油 | |
市原 | 製茶,生糸,食塩 | |
東葛飾 | 東葛飾 | 製茶,食塩 |
南相馬 | 製茶 | |
印旛 | 印旛 | 製茶,生糸 |
下埴生(しもはぶ) | 製茶 | |
君津 | 天羽 | 製茶 |
周准(しゅす) | 製茶 | |
望陀(もうだ) | 製茶,生糸,食塩 | |
長生 | 長柄 | 製茶,生糸,食塩 |
上埴生(かみはぶ) | 製茶,生糸,莚,菅笠 | |
夷隅 | 製茶 | |
安房 | 安房 | 白土 |
平(へい) | 製茶,半紙,チリ紙 | |
朝夷(あさい) | 製茶 | |
山武 | 山辺 | 製茶 |
武射(むさ) | 製茶 | |
匝瑳 | 製茶,生糸,木綿,醤油,鍬,筬,編笠 | |
香取 | 製茶,生糸 | |
海上 | 製茶,縮木綿,木綿,醤油,ヒシオ,砥石,魚油 |
(『千葉県統計表』)
生糸―印旛・望陀(もうだ)・長生・匝瑳・香取・市原。
木綿―匝瑳・海上。紙類―平(へい)。
醤油―匝瑳・海上。
製茶―千葉・市原など、ほとんど全県下で行われた。この製茶業は、柴原初代県令に保護・奨励されて、全県下に普及した。
ただ、製茶業が、一般に普及していたとはいえ、その製造形態は、農家による自家用製茶が大部分で、品質的には、見劣りするものであった。
千葉郡の製茶業は、江戸時代、佐倉藩主堀田正睦が、支配下の印旛・千葉・埴生(はぶ)の三郡に、未開の地が広く、特記するような産業のないのを憂え、農村に茶業を奨め、藩士にも荒蕪地を与えて、茶園を開かせたのが、基といわれる。