明治十年代の製造業

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 明治十三年には、現在の千葉県地域を対象とした統計表が発表され、以後毎年刊行されるが、この第一回の『千葉県統計表』によれば、同年のわが県総人口は、一一〇万八六七八人、そのうち工業従事者は一万八〇二四人であった。これは、農業従事者のわずか三パーセント、商業従事者の四五パーセントであった。当時の工業の発達程度がうかがい知れる。
 同表には、工作場として三工場の名がみられるが、それは、佐倉町の靴・織物工場工人二五名、匝瑳郡の綾縞(あやしろぎぬ)・白木棉工場工人二五名、海上郡の銚子縮工人二五名であった。
 千葉町関係では、度量衡製作人一人となっている。この度量衡の製造は、明治六年当地に県庁がおかれて後、最初に発生したもので、以後、当地区は、県内唯一の度量衡生産地域としての地位を維持することになる。
 次に、統計表より特有産物の中の工業製品をみると、五―一九表に示すとおりである。
5―19表 明治13年郡別特有産物
地域特有産物(工産関係)
千葉製茶,菜種油
市原製茶,生糸,食塩
東葛飾東葛飾製茶,食塩
南相馬製茶
印旛印旛製茶,生糸
下埴生(しもはぶ)製茶
君津天羽製茶
周准(しゅす)製茶
望陀(もうだ)製茶,生糸,食塩
長生長柄製茶,生糸,食塩
上埴生(かみはぶ)製茶,生糸,莚,菅笠
夷隅製茶
安房安房白土
平(へい)製茶,半紙,チリ紙
朝夷(あさい)製茶
山武山辺製茶
武射(むさ)製茶
匝瑳製茶,生糸,木綿,醤油,鍬,筬,編笠
香取製茶,生糸
海上製茶,縮木綿,木綿,醤油,ヒシオ,砥石,魚油

(『千葉県統計表』)


 生糸―印旛・望陀(もうだ)・長生・匝瑳・香取・市原。
 木綿―匝瑳・海上。紙類―平(へい)。
 醤油―匝瑳・海上。
 製茶―千葉・市原など、ほとんど全県下で行われた。この製茶業は、柴原初代県令に保護・奨励されて、全県下に普及した。
 ただ、製茶業が、一般に普及していたとはいえ、その製造形態は、農家による自家用製茶が大部分で、品質的には、見劣りするものであった。
 千葉郡の製茶業は、江戸時代、佐倉藩主堀田正睦が、支配下の印旛・千葉・埴生(はぶ)の三郡に、未開の地が広く、特記するような産業のないのを憂え、農村に茶業を奨め、藩士にも荒蕪地を与えて、茶園を開かせたのが、基といわれる。