戦争がはじまると馬と荷車の徴発がしばしばあった。
　馬の徴発
一、明治三十七年二月六日
　輓馬八四頭
　検査日　二月七日
　検査地　習志野原
二、明治三十七年三月六日
　乗馬一一七頭、輓馬五三三頭、駄馬六七頭、計七一七頭
　検査日　三月八日、十一日
　検査地　習志野原
三、明治三十七年三月六日
　輓馬七二頭
　検査日　三月十一日
　検査地　習志野原
四、明治三十七年五月十四日
　輓馬六六頭、駄馬八七八頭、計九四四頭
五、明治三十七年十一月九日
　乗馬一九頭、輓馬六三四頭、駄馬二二四頭、計八七七頭
　検査日　十一月十四、十五日
六、明治三十八年二月一日
　乗馬、輓馬、駄馬、計九九五頭
　検査日　二月七日
　検査地　習志野原
　この馬の徴発は農家が農耕に使用していた馬を対象としたものである。この馬の徴発の配当数は、千葉郡全体であったが、総数三、六八九頭となる。『千葉郡誌』によれば、明治三十年の郡における馬の頭数は、農役用三、二一三頭、運搬用一、〇六四頭、乗用六頭、計四、二八三頭であった。農家三戸に対して約一頭の割合であった。馬の徴発には徴発委員長として騎兵将校また砲兵将校が派遣された。一方では郡長をはじめ各町村長、各町村の助役、各町村の書記が馬の検査員に任命され、町村長の命令で農家は馬を習志野原にひいて検査をうけた。このとき町村から馬の買上値段を決定する評価委員が指名された。農家が検査をうけた馬は三、六七〇頭、このうち二、九四六頭が不合格馬となり、徴用された馬は七二四頭であった。千葉郡の馬の六分の一が徴用された。この買上価格は五万二四五三円、一頭平均七四円で、最低は四五円、最高一五〇円であった。この価格は従軍受賞者の賜金にくらべて考えざるをえないものがある。徴発配当数は農家が所有している馬の総数にほぼ等しい数であったが、実際に徴発されたのはその六分の一であった。農家は若い働き手を出征兵士として召集され、大切な農耕用の馬まで徴発されるものもあった。

日露戦争の軍馬の碑

　車の徴発
一、明治三十七年六月二十二日
　一人ひき荷車三千七百輛
　検査日　六月二十三日
二、明治三十七年十月八日
　一人ひき荷車九百輛
　検査日　六月十三日
三、明治三十八年二月十日
　一人ひき荷車全部
　検査日　二月十二日
　この車の徴発には徴発委員長として砲兵将校が指揮し、郡長、町村長、助役、書記が徴発委員として一人ひき車の所有者に検査場の千葉停車場の構内へ集めることを命令した。徴発配当は、五、四七五輛であり、出場した車数は五、二五九であった。このうち四、七五二が不合格となり、五〇七だけが徴発された。この買上価格は四、三四五円、一台当り最低七円、最高一二円であった。
　軍需品の購買
　明治三十七年八月十五日から同三十八年十一月二十七日まで六回の軍需品の購買があった。
　第一回　乾草製造　二万〇七二五貫
　第二回　大麦一万一千石、わらかます一万六千枚、太繩一万九千把
　第三回　大麦千五百石
　第四回　大麦二千石
　第五回　軍用夏じゅばん、ずぼん下三千組
　第六回　同　八千組
これらの軍需品は町村別に割当てて時価で買いあげている。また、夏じゅばんとずぼん下は、愛国婦人会、女子師範学校、県立高等女学校に委託し、一部は千葉町の請負人に委託して製造して納入した。
　戦時国債
　明治政府は戦争遂行のためには多額の資金をかきあつめなければならなかった。税収を増加させたがこれは限界があった。そのために戦争国債を発行した。
　第一回　明治三十七年二月（大蔵省令第四号）
　第二回　明治三十七年五月（大蔵省令第十七号）
　第三回　明治三十七年十月（大蔵省令第四十一号）
　第四回　明治三十八年二月（大蔵省令第八号）
　第五回　明治三十八年四月（大蔵省令第二十六号）
　第六回　明治三十八年二月（大蔵省令第八号臨時事件公債）
これらの戦時国債の募集には、県、市町村の行政機関を通じて募集の勧誘をした。政府は府県に募集額を割りあて、府県は郡に募集額を割りあてた。千葉郡役所では郡内の町村長とその町村の「重立ちたる者」を召集して、県知事の立ちあいのもとに、郡長が勧誘演説を行い、応募について協議した。さらに郡役所の職員を各町村に派遣して、町村長と協力して、「重立ちたる者」に戦時国債の応募を勧誘して歩いた。その結果は、当時の新聞に報道しているように応募額が割りあて額をはるかに上まわる盛況であった。