激しい物価の変動と影響

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 戦争景気とその後の反動的不況は物価のはげしい変動をともなった。特に第一次大戦の前後には、物価の変動がはげしかった。諸物価は大正五年にくらべて、大正九年には二倍になるという高騰であった。大正九年の上半期まで物価は暴騰したが、同年の下半期から下落しはじめた。全国の平均米価は、大正六年に一石一六円五六銭であったが、翌七年の一月には二三円八銭となり、七月には四一円六銭に高騰した。この七月に富山県魚津町に米騒動が発生し、たちまち全国にひろまった。当時の『国民新聞』の千葉版に、千葉町をはじめ千葉県各地の生活が困窮していることを報道している。
 千葉の細民救済 外米販売を町営にする 郡当局もその案に賛同す(八月十三日)飢餓に脅かさるる無産者群―腰弁、小商人、日雇人(千葉県警察部の調査 八月十五日)

 各地で米を買えず、かぼちゃ・ばれいしょなどで飢をしのいだり、古米を売り惜む商人がいることなどを連日のように掲載した。千葉町をはじめ各地では、小作人、職人、小さい小売業者、薄給サラリーマン、日雇などは飢餓に苦しむ状態であった。これに対して地主、上層農民、米穀商は大きな利益をえた。千葉町の官庁・銀行・会社では月給三〇円以下の薄給者に白米割引券を交付した。千葉県当局は外米一升を一五銭で売るように救済策を行った。大正九年の下半期から米価をはじめ諸物価が下落しはじめた。千葉町では俸給生活者の生計が好転したが、会社・工場が不況になった。更に東京に出稼ぎをしていた人々は会社や工場が倒産したので帰郷してきた。そのために市街地や村落に失業者が増加した。千葉町の産業はおとろえ、農産物の価格は低落した。千葉町の人々の購買力は減少して、小売店も売上げ高の減少に苦しんだ。このような不況の中に、大正十年市制施行、千葉町から千葉市となった。
5―47表 第一次大戦前後の物価
期間 
種類         
大正5年大正9年大正12年
上半期下半期上半期下半期上半期下半期
白米(1石)円 銭
13.91
円 銭
15.16
円 銭
56.16
円 銭
40.33
円 銭
34.88
円 銭
37.88
大麦(1石)3.333.6215.9110.669.039.26
小麦(1石)8.919.3220.3316.3312.3713.12
大豆(1石)9.009.3320.3316.3316.7616.66
小豆(1石)10.0011.5030.5021.6619.1522.39
清酒(1石)50.0050.0076.1687.5094.6695.00
みそ(1貫)353571707276
(100斤)40.0040.0083.1685.00124.44124.77
鰹節(1貫)4.004.838.759.6612.9813.14
牛肉(100斤)28.0032.0059.0054.3343.2739.44
豚肉(100斤)20.0024.0043.3339.3341.3834.77
鶏肉(1貫)1.751.834.254.454.354.02
鶏卵(100箇)3.232.664.835.303.333.73
牛乳(1升)303063705656
和白砂糖(100斤)17.0017.1642.8338.3322.2223.92
洋白砂糖(100斤)21.5021.6629.0526.94
和赤砂糖(100斤)11.5011.6632.5028.3322.3120.73
洋産繰綿(100斤)27.0027.0074.5073.0080.6060.55
紡績綿糸(100斤)33.0033.00119.1697.5079.4488.11
洋産生金巾(1条)4.404.4024.0024.0013.4312.94
晒金巾(1釜)4.604.6025.0010.9611.70
海気(1反)8.008.0010.5010.339.889.36
大麻(100斤)45.0045.00141.66140.00115.44126.88
松角材(2間)6.006.0032.6629.003.182.51
杉角材(2間)8.008.0035.3231.833.012.88
板6分(1坪)70703.102.454.024.80
石油(2かん)4.604.6010.838.586.506.89
石炭(トン)6.507.1627.0024.6625.7425.55
薪楢(10貫)50531.411.251.081.42