市制五十年新市庁舎竣工記念式典にあたり市民へのご挨拶

 大正十年、千葉市が誕生して本年は五十年の記念すべき年を迎えることになり、恰も新市庁舎の竣工をみましたので、これを記念しこれまで市政に尽力され、又今日の市勢隆盛に協力された市民皆様と共に喜びをともにし、更に未来に向けて限りない躍進をお誓いいたしたいと存じ記念式典を催した次第であります。

 千葉市は市域僅かに十五平方キロ、人口三万三千人をもって市制が施かれ、爾来五十年を閲みすることになりましたが、これまで半世紀にわたる市政の歩みは、たぐいまれな飛躍と高揚の歴史でありました。その間昭和二十年七月、戦災によって中心市街地が壊滅するの不幸に遇いながらも、市民皆様の努力によりまして、戦後荒廃の中からの再生は逞しいものがあり、医療と軍隊の町といわれた消費一辺倒の都市から近代産業都市にみごとに蘇生し、千葉市は面目を一新して大きく発展を遂げることができました。

 今日、市域は二百五十平方キロにまで拡張され、人口は五十万になんなんとしその財政力は百五十億の巨額に達し、全国都市中人口は十五位、財政力は十三位を占める代表都市にまで躍進するに到りましたこと誠に欣快に存ずるところであります。

 戦災復興の大任を担って爾来二十年、市政五十年の歴史をひもときながら戦後の歩みを顧みる時私にとって感慨ひとしお深いものがございます。

 私はこれまで市政の運営にあたり〝緑と健康な町〟づくりを標榜し、同時に「人をつくること」「経済力をつくること」「良い環境をつくること」の三本の柱を掲げて参りましたが、既に都市活動の基盤である市域は、将来に備えて充分に確保され、経済活動の面では生産活動の原動力といわれる千葉港が全国港湾の六番目に位置する隆盛ぶりで、これからの経済発展が約束されております。

 教育振興の上に、施設整備の面では、校舎の建設はほぼ整い、屋内体育館、プールも全小中学校に普及いたしました。

 その他道路、公園、下水、衛生等快適な環境づくりの面、更に社会福祉施設の充実等、都市水準は著しく向上し風格を備えつつ都市の格調を高めることができ、かくして市制五十年を機とし近代都市としての基盤はほぼ固められたものと存じます。

 恰も一九七〇年代の新しい時代を迎えるに当り、私は市政運営の新たな指標として〝多彩な都市〟づくりを標榜し、この躍進の勢を更に一段と進捗させたいと存じます。千葉市は今、次の五十年に向けて新しい一歩を踏み出そうとしております。この時五十年に亘る偉大な先人の足跡をしのびつつ、かつ時代の進運に誤りないことを期し、力と英知を結集して日本の代表都市にふさわしい誇りと格調をもった都市の創造に向って、渾身の努力を傾けて参る所存でありますので、市民皆様の一層のご支援ご協力をお願い申し上げます。

 なお、躍進千葉市勢を象徴する殿堂として建設を進めて参りました新市庁舎は、本日完成を見ましたが、議事堂を別棟に独立建物とし、また市民センターの設置を大きな特色として、外観は白色を基調とした白亜の殿堂を心がけましたが白は自由と平和の上に清潔を表わし、明るく清潔な市政、未来への限りない希望をこめたのでございます。一千台収容の充分なスペースの駐車場を確保し、魅力ある広大な臨海公園に接し、更に七つの海につながる港に汽笛が高鳴る新天地、この生産活動の横溢した息吹きに浸りながら、市政に当ることは誠に快心の至りであり、全職員力を合わせて事務能率の向上を図り、市民皆様の福祉に十分奉仕できるものと信ずる次第であります。

 千葉市の姉妹都市から遠くノースバンクーバー市長を始め、市民各界各層を代表する多数の皆様をお迎えして本日の喜びを共にすることの出来ますことを誠に光栄に存じ、市民皆様の益々ご多祥をお祈りして式辞といたします。

   昭和四十五年二月十一日

千葉市長 宮内三朗

この市史の発刊にあたり、宮内三朗前市長に巻頭を飾っていただくところでありますが、それが叶いませんので、昭和四十五年二月十一日市制五十年新市庁舎竣工記念式典におけるご挨拶を掲載させていただきました。

(千葉市史編纂委員会)