新憲法制定のいきさつ

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 昭和二十年(一九四五)十月九日、幣原内閣が発足すると、同月十一日、マッカーサー元帥は憲法改正について同首相に指示を与えた。政府はここで憲法問題調査会を設け、松本丞治国務大臣を委員長として憲法改正の調査に着手した。これとは別に近衛文麿元首相が憲法改正の準備に着手したが、これは近衛元首相の私的なものであるとして、結局中止された。

 その後各種の改正案が各政党や個人などから発表されたが、国民は衣食住の問題に関心を奪われ、憲法改正にはあまり関心を示さなかった。

 改正の準備作業は種々のいきさつがあったが、結局マッカーサー司令部との折衝などが何度となく繰り返された。そして二十一年五月に招集された第九十議会に提案され、若干修正が加えられたものの同年十月七日、衆議院、貴族院の審議を終わって成立した。

 この新憲法の特徴を平易にいえば四点に分けられる。

 ①主権在民の制度=これは政治がすべて国民の意思に従って行われるということである。換言すれば国家の支配権は、直接に、または間接に国民の意思に基づくことを主張するものである。これは国会議員の選挙をはじめ市町村長選挙などの方法の形で示されている。

 ②人権尊重=これは法の下での平等、家族生活の平等、信教・学問の自由、集会及び結社の自由、言論・出版の自由、海外渡航の自由、国籍離脱の自由など多くの自由が保障されている。

 ③権力分立主義=国家の政治組織の原理として権力分立主義が主張される。為政者が権力を乱用して国民の権利自由を侵害することのないよう企図されている。

 ④戦争放棄による平和主義である。

 そのほか天皇の象徴化や国民の投票や納税の義務もあるが、以上の四点を中心に、戦後は新憲法のもとで社会制度や政治制度などが大転換をとげたのである。しかし一面では永く続いた「家」「家長」制度が崩壊し、年寄りの孤独が社会問題になってきている。