自治体警察の発足

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 終戦後の民主主義体制への改革に伴って、警察制度も根本から改正された。特高警察がいち早く姿を消したのにつづいて昭和二十二年十一月に警察法の施行によって警察制度は国家警察の地区署と自治体警察の二本建てになり、自治体警察には市署及び町署が置かれるようになった。千葉市では翌年三月六日に千葉市署がスタートした。警察制度としては、かってない大改革であるが、自治体の強化という名題のもとに改革が推進されたものである。

 敗戦後、人心の荒廃や戦勝国の在留者との摩擦、物資の不足に伴うヤミ行為の横行、旧秩序の崩壊によって社会は混乱に陥り、各種の犯罪が続出していた。こうした最中の改革であったが、警察機能は、敗戦後といえども特高の廃止以後は、比較的整っていたので、人事の異動を除けば、ほぼスムーズに移管されたといえる。発足当時の模様は市議会の文書につぎのように記されている。

一 自治体警察署として発足

二 警察法実施に依り千葉市警察署として発足

三 管轄区域、千葉市一円(東西九粁、南北一四粁、面積八七・七五平方粁)

四 現在職員数


警視一名(署長)、警部一名(次長)、警部補八名、巡査部長十六名、巡査一四二名、計一六八名、雇員一四名、傭人二名、計一六名なるも近く雇員六名程度採用の見込。

(原文のまま)

 発足当時の機構は七課、警部補派出所二、市内派出所一三、直轄駐在所四という陣容であり、それらの内わけと業務分担はつぎのとおりであった。

教養課 警部補一名、巡査部長二名、計三名を以て之に当り、毎日午前八時三十分より約一時間一般執務について教養を実施その他を担当するものなり。

警務課 警部補一名、巡査部長一名、巡査三名、書記二名、計七名を以て之に当て、主として署員の進退、身分、賞罰、装備、給与、公安委員会、福利厚生を担当するものなり。

警備課 警部補一名、巡査部長一名、巡査七名、書記一名、計十名を以て之に当て、主として警備、外国人保護、渉外、銃砲火薬、其の他危険物の取締りに当るものなり。

保安課 警部補一名、巡査部長一名、巡査十一名、婦警四名、書記一名、計十八名を以て之に当り、主として交通取締り及び警察通信、風俗、営業、体育等を担当。交通違反については月三百件に及んでいる。

防犯課 警部補一名、巡査部長四名、巡査六名、書記一名、計十二名を以て之に当り、主として統制経済違反及取締りに当って居るものなり。

捜査一課 警部補一名、巡査部長六名、巡査一一名、書記四名、計二十二名を以て之に当て、主として管内発生事件の捜査、検挙、竝びに取調べ、事件送致、留置人に対する事項等犯罪全般を担当するものなり。

捜査二課 警部補一名、巡査部長一名、巡査(刑事)十名、計十二名を以て之に当て主として発生事件の捜査、検挙、現場鑑識、戦犯人捜査等を担当するものなり。

蘇我派出所 警部補一名、巡査七名、計八名を以て之に当て、管内今井町、蘇我、赤井、大巌寺、宮崎、花輪、大森の各受持町村の発生事件の検挙、取締りに当るものなり。

稲毛派出所 警部補一名、巡査十二名、計十三名を以て配置し、主として管内稲毛町、検見川町の発生事件の捜査、検挙に当り、其の他一般取締りをも併せ行ふものなり。

其の他 旧千葉市内に巡査派出所十三ヵ所を有し、其の人員六十三名を配置し、日夜管内受持区域の警戒、取締り、捜査検挙に当るものなり。

(原文のまま)

 直轄駐在所として千城村、都町、若松町、穴川町に各一名宛配置した。予算は昭和二十三年七月一日から千葉市の予算となった。千城村は昭和十九年に千葉市に合併したにもかかわらず、このときの文書に千城村と出ていることは、なにかのまちがいであろう。

 このほか、国家警察として千葉地区警察署がおなじく千葉市に置かれた。地区警察署は、千葉郡部の警備、捜査などを受け持ったもので、発足当時の陣容は四三人であった。内わけは、

 警視一名、警部一名、警部補三名、巡査部長八名、巡査二〇名、技手及び事務官一名、書記及び書記補七名、傭人二人

であった。千葉市警察署に比べれば、四分の一ぐらいの小規模のものであった。

旧千葉中央署(昭和初期のもの)

 この警察制度の改革にともなう一つの特徴は公安委員会を設置したことであった。同委員会は、警察機能の最高管理者として、警察の民主化とともに、真に市民のための警察としての役割と運営に当たり、その機能の発揮のため、随時委員会を開いた。しかも、従来とかく独善的な権力行政に陥りがちだった警察の弊害を除去するために、その使命は重大であった。したがって委員長は市議会のたびに議会に出席させられた。

 この公安委員会は、千葉県が全国に先がけて試験的に設置したもので、市の公安委員会は昭和二十二年(一九四七)十一月二十七日に発足した。形は市長の所轄のもとに警察行政を管理したが、翌年三月、千葉市署のスタートとともに、その監督的立場に立った。

 委員は委員長以下三名で構成し、任期は三年であった。委員には一定の資格要件を備えたものの中から市長が市議会の同意をえて任命した。初代委員には草切信栄(委員長)、兼巻和一、杉本郁太郎の三人であった。

 発足とともに初代署長に小笹精一警視が任命されたが、小笹署長は、就任後一年余の二十四年十月七日には市の助役となったので、二代目署長に鈴木兼吉が任命された。