千葉県開発公社の設立

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 内陸部への企業進出は各企業が独自の判断で行ったため、進出地域・企業内容・規模などなんら共通性も、計画性もなかった。そのため、施設整備について、不経済・不合理な面が多く、公害発生の危険性もあり、都市計画上からも問題であった。そこで県は、(一)県民所得の向上とその地域格差の是正 (二)京葉工業地帯の関連企業を計画的に受け入れる (三)工場の地方分散、特に首都圏における衛星工業都市建設という国家の要請に応えるという目的から、積極的・計画的・合理的に工場を受け入れることにし、昭和五十年度を目標に、三千三百万平方メートルの開発計画をたて、その実施機関として昭和三十五年三月、財団法人千葉県開発公社を設立した。

 開発地点は工場の過度集中を避けるため、一地点の開発規模を、三三万~一三〇万平方メートル程度にし、誘致企業は、(一)国民経済上重要な産業を営む (二)地元からの雇用数が多く、かつ地元への経済効果が大きい (三)工場外に排水せず、用水使用量が地区に適合している (四)産業公害の程度が地区の民生上許容範囲内である (五)建設計画が確実で、用地を合理的に使用し、生産設備が合理化されて作業環境が優れている (六)用地取得後早期に工場を建設する、以上の基準に適合する機械工業・雑貨工業・金属製品・窯業製品・化学製品などの二次加工、及び天然ガスを原料とする化学工業に属する企業を主体とした。

 開発地点は、(一)道路が近隣まで整備されており、製品・原材料の輸送が可能 (二)優良農地を主体とせず、地形平坦で整地が容易であり、相当規模の面積が確保される (三)取水・排水が可能 (四)近隣に住宅団地の確保と、周辺から通勤が可能である (五)都市計画的観点から、工業用地とすることが適正である、このような利点によって選定した。

 企業に対しては、(一)政治・経済・消費の中心東京に隣接し (二)臨海部の大工場と関連することで発展できる (三)電力が豊富で、天然ガスも利用できる (四)海上輸送も便利になる (五)県内から労働力を集めやすい (六)平地林が広く農地転用上の障害が少ない、などの立地条件を示して誘致に努めた。

 市町村でも県にならって開発協会・開発公社を設立したが、その第一号は、財団法人松戸市開発協会である。昭和三十六年、葛南・千葉地区を対象とした「三十五年度工業適地調査」が公表されたが、当市関係では、誉田・六方・蘇我地区が適地とされた。

 同年、当市に進出したのは、六方町四、長沼町二、長沼原町二、園生町四、犢橋町二、天戸町一の計一五企業である。その内容は、機械製造四、窯業三、金属加工三などであった。おもな企業は次のとおりである。

 日東紡建材(株)――六方町。 昭和三十七年七月、完全不燃で吸音性能をもつ天井板ミネラトーンの製造を開始。

 東京都内にあった工場をすべて統合し、六方町に総合建材工場を完成させたのは昭和四十三年四月である。

 不燃断熱吸音材や完全弾性防水性継ぎ目材、その他を製造する。原料の鉱滓(こうさい)バラストは川鉄から送られ、燃料の天然ガスは地元産のものを使用する。東北・北陸地方出身の従業員が多い。

 住友重機工業(株)――長沼原町。昭和四十年、プラスチック型成機の製造を開始。この地には、下請工場がない不利はあるが、広く安い土地を求めて立地した。

 九州機工――犢橋町。北九州八幡より進出。昭和四十一年には、本社も当地に移した。変圧器の鉄芯・鋼板のスリット加工・鉄心焼鈍などの製造加工を行う。主原料は、新日鉄八幡・広畑・堺より海路京葉港に陸揚げされる。日立製作所・三菱電気が主取り引き先である。鉄芯メーカーは数少なく、関東地区で特異な存在である。

 安芸製作所――犢橋町。江戸川区で創業。中型の標準電力用変圧器をはじめとして、各種変圧器の製造を行う。主取り引き先は、日立習志野・日立亀戸の二工場である。

 川北工業――園生町。川鉄の出資、東北製鋼の技術が結合して設立された。鋼線・鋼索の専門メーカーで、川鉄の関連企業の一員である。

 昭和三十七年度は一〇企業が進出、桜木町に一、土気町小食土(当時)に一以外は、千葉北部地区に進出した。

 サンアルミニューム――六方町。神戸製鋼・日商の出資で昭和三十六年創業、スイスアルミ社と技術提携した。JIS表示工場である。六方町進出で市場接近はなったが、原料のアルミ箔地を、神戸製鋼下関長府工場から海路千葉港まで運ぶことになった。

 落合製作所――犢橋町。市の斡旋で進出。工業用ファスナーの専門メーカーである。原料の特殊鋼は、大同・日新製鋼などから入り、製品は江戸川区の本社経由で、電気メーカー・自動車メーカー・造船所・ミシンメーカーなど多方面に出荷される。メッキ処理上、排水施設の完備がのぞまれる。

 三和機材――天戸町。無騒音・無振動穿孔機を製造する。この部門では全国市場を独占している。

 三井プレコン(旧東洋プレハブ)――桜木町。一戸建て用及び公営住宅用のコンクリートプレハブの製造を行う。公営住宅用製品は、千葉県内と山形県に出荷される。当工場は加曾利貝塚に隣接し、そのため用地拡張が予定どおり進まなかった。一方市では貝塚公園の整備を急ぐことになった。

 園生・長沼・犢橋・六方・山王・長沼原には、昭和三十四年から三十七年に三二の製造業が進出立地したが、この地域は広く安い用地という条件以外は、工業地帯としての諸施設は全く欠けていた。そこで、進出企業が相携えて工業地帯としての条件整備に立ちあがろうという気運が生まれ、一方市の斡旋もあり、同年七月長沼地区に、九月草野地区、翌年犢橋地区に進出企業の協議会が結成され活動を開始した。

 小食土町に進出したのは椎野商維で、同地区にワイシャツの縫製工場を建設した。原料・製品共に、東京亀戸の本社経由で行う。