第二次大戦後に漁業制度の改革が行われ、漁村の民主化と漁獲高の増加がはかられた。昭和二十四年(一九四九)二月、水産業協同組合法が施行された。これによって昭和十八年から十九年にかけて戦時中の国策の遂行と、水産物と資材の配給のためにつくられた漁業会を解散し、新たに漁業協同組合に再編成された。現千葉市域には当時七つの漁業会があったが、これらはそれぞれ漁業協同組合となった。
幕張町漁業会 →幕張町漁業協同組合(幕張町馬加八九二)
検見川町漁業会→千葉市検見川漁業協同組合(検見川町二―四六五)
稲毛漁業会 →千葉市稲毛町漁業協同組合(稲毛町一)
千葉漁業会 →千葉市千葉漁業協同組合(神明町二九一)
今井町漁業会 →千葉市今井町漁業協同組合(今井町四〇一)
蘇我町漁業会 →千葉市蘇我町漁業協同組合(蘇我町一―一五三)
生浜町漁業会 →生浜漁業協同組合(生浜町浜野一、一〇八)
つづいて昭和二十四年十二月に新しい漁業法が公布され、翌年三月に施行された新漁業法の公布にあたって、千葉県当局が新漁業法の解説会を千葉市の水産会館で開いたとき(昭和二十四年十二月)、千葉市からはもちろん県下各地から集まった来聴者は場外にまであふれた。
新漁業法によって規定された漁業権は定置・区画・共同の三つであり、全て地方長官の免許によるものとされ、その内容は次のとおりである。
定置漁業――漁具を定置して営む漁業で次の二つがある。
(一) 身網の設置される場所の最深部が最高潮時において水深二七メートル以上であるもの
(二) 北海道においてにしん、うるめいわし、またはます(陸封性のものを除く)を主たる漁獲物とするもの
区画漁業――三種に区分される。
(一) 第一種 一定の区域内において石、瓦、竹、木等を敷設して営む養殖業(海苔篊建、かき篊建、真珠筏式養殖業等)
(二) 第二種 土、石、竹、木等によって囲まれた一定の区域内において営む養殖業(魚類、すっぽん、えび類の養殖業等)
(三) 第三種 右の二つ以外で一定の区域内で営む養殖業(貝類の養殖業等)
共同漁業――一定の水面を共同に利用して営むもので次の五種類に区分される。
(一) 第一種 藻類・貝類または主務大臣の指定する定着性の水産動物(なまこ、うに、いせえび、しゃこ、ひとで、餌虫、ほや、かしぱん等)
(二) 第二種 網漁具(魞(えり)・梁(やな)類を含む)を移動しないように敷設して営む漁業で定置以外のもの(身網の水深二七メートル以下の桝網、出網、張網、碇止刺網(磯建網)等の小型定置)
(三) 第三種 地曳網、地漕網、船曳網、飼付、鱪漬(しいらづけ)漁業又は築磯漁業
(四) 第四種 寄り魚または鳥付こぎ釣漁業(主として瀬戸内海)
(五) 第五種 内水面(主務大臣の指定する湖沼を除く)又は主務大臣の指定する湖沼に準ずる海面において営む漁業で右の四つ以外のもの
新漁業法下の千葉市地区の漁業権漁業区域をみると(六―一一図)、それぞれの漁業協同組合を構成している地域の地先に共同漁業権の漁場が展開し、その中に区画漁業権の漁場が含まれている。稲毛・検見川の漁業権地域は共有であり、蘇我は川崎製鉄所があるため南の生浜方面に狭められている。千葉市地区の区画・共同漁業権の内容を一覧表にすると六―二七表のようになる。
番号 | 位置 | 地元 | 漁獲物 | 漁業の時期 | 期間 | 制限条件 |
10 | 幕張地先 | 幕張町 | のり | 九月一日~三月三十一日 | 五年 | 毎年八〇〇柵他組合よりの入漁権設定義務を有する |
11 | 検見川町 稲毛町地先 | 検見川町 稲毛町 | 〃 | 〃 | 〃 | 毎年三〇〇柵 〃 |
12 | なし | |||||
13 | 黒砂・登戸 穴川・新宿 寒川・神明地先 | 黒砂・登戸 穴川・新宿 神明・寒川 | 〃 | 〃 | 〃 | 千葉港建設計画による航路完成の場合これを変更する |
14 | 蘇我町地先 | 蘇我町 | 〃 | 〃 | 〃 | なし |
15 | 生浜町地先 | 生浜町 | 〃 | 〃 | 〃 | なし |
番号 | 位置 | 区域 | 関係地区 | 漁業の種類 | 時期 | 存続期間 | 制限条件 | |
一〇三 | 幕張町地先 | 別図 | 幕張町 | あさり | 1/1~12/31 | 十年 | 第二種すだて漁業、漁貝設置については委員会の指示をうけるものとする | |
はまぐり | 〃 | |||||||
しおふき | 〃 | |||||||
もがい | 〃 | |||||||
ばかがい | 〃 | |||||||
すだて(いな・ぼら・くろだい・せいご・あじ) | 3/1~9/30 | |||||||
一〇四 | 検見川町 | 別図 | 検見川町 | あさり | 1/1~12/31 | 十年 | ||
稲毛町地先 | 稲毛町 | はまぐり | 〃 | |||||
しおふき | 〃 | |||||||
ばかがい | 〃 | |||||||
もがい | 〃 | |||||||
餌だし | 〃 | |||||||
いそぎんちゃく | 〃 | |||||||
一〇六 | 千葉市地先 | 別図 | 黒砂町 | あさり | 1/1~12/31 | 十年 | 第三種の地曳網漁業の操業については委員会の指示をうけるものとする。 千葉港建設計画による航路区域についてはその工事実施の場合漁業区域中より航路区域にあたる部分を除くものとする | |
登戸町 | はまぐり | |||||||
穴川町 | しおふき | 〃 | ||||||
神明町 | ばかがい | 〃 | ||||||
新宿町 | おおのかい | 〃 | ||||||
寒川町 | もがい | 〃 | ||||||
えだし | 〃 | |||||||
いそぎんちゃく | 〃 | |||||||
おごのり | 〃 | |||||||
地曳網 | 3/1~10/31 | |||||||
一〇八 | 蘇我町地先 | 別図 | 蘇我町 | あさり | 1/1~12/31 | 十年 | 第二種すだて漁業漁具設置については委員会の指示をうけるものとする | |
はまぐり | ||||||||
しおふき | 〃 | |||||||
ばかがい | 〃 | |||||||
もがい | 〃 | |||||||
おおのがい | 〃 | |||||||
えだし | 〃 | |||||||
いそぎんちゃく | 〃 | |||||||
きしやご | 〃 | |||||||
おごのり | 〃 | |||||||
すだて(あじ・このしろ・せいご・くろだい) | 3/1~9/30 | |||||||
一〇九 | 生浜町地先 | 別図 | 生浜町 | あさり | 1/1~12/31 | 十年 | 同右 | |
はまぐり | ||||||||
しおふき | 〃 | |||||||
ばかがい | 〃 | |||||||
まてがい | 〃 | |||||||
きしやご | 〃 | |||||||
ごうない | 〃 | |||||||
おごのり | 〃 | |||||||
すだて(いな・ぼら・くろだい・せいご・あじ) | 3/1~9/30 |
この新しい漁場を決定するために、漁民の選挙によって選ばれた漁業調整委員会をおいて、千葉県知事はこれに諮問した。漁業調整委員会は漁業の種類、漁場の位置と区域、漁期その他の免許内容を審議した。また共同漁業については、その関係地区とその漁場計画を定めた。更に漁業調整委員会は漁業者の適格性と優先順位をきびしく規制した。また漁民社会における封建的な搾取や身分的な隷属関係が残らないようにして、漁業の利益が一部の階層に独占されることがないように考慮した。