このように旧漁業法に基づく漁業権は一切消滅することになったのであるが、この消滅の時点における漁業権及びこれをを目的とする入漁権、賃借権並びに使用貸借による借主の権利を持つ者に対して国が補償金を交付することとなった。
このために国が交付した全国補償総額は一七八億六四一万円であったが、そのうち本県分としては七億二二〇五万円であった。そのうち定置漁業権に一億一二二三万円、特別漁業権に一一一万六千円、区画漁業権に二、〇七二万五千円、専用漁業権に三億五四六九万八千円、入漁権に一億八九五二万八千円、内水面漁業権に四、六七五万三千円の割当てで交付された。
この割当てに対し、本県では、漁業権漁業の意義を強く解し、この補償の成否が直ちに漁村の民主的・経済的再建の方途を決定する重要なものとして、知事のみの裁量によって処理せず、漁業者及び漁業従事者の代表七名と学識経験者の代表三名を選任し、漁業補償委員会を構成し、漁業補償配分事務を処理させることとした。
千葉地区では、幕張町漁業会に五六六万二千円、検見川町漁業会に二四四万四千円、稲毛漁業会に一六七万三千円、千葉漁業会に五九八万四千円、今井町漁業会に三七万五千円、蘇我町漁業会に二六八万九千円(うち借主分、二万一千円)、生浜町漁業会に二〇〇万七千円(うち借主分、一万六千円)が補償・交付された。各漁業権別・漁業会別では六―二八表のとおりである。
専用漁業種 | 定置漁業種 | 第1種区画漁業種 | 第3種区画漁業種 | 計 | |||||
番号 | 補償金額 | 番号 | 補償金額 | 番号 | 補償金額 | 番号 | 補償金額 | ||
幕張町漁業会 | 3994 | 912,600円 | 360 | 316,000円 | 728 | 771,000 | 20 | 3,470,000 | 5,662,600 |
729 | 116,000 | ||||||||
730 | 77,000 | ||||||||
検見川町 〃 | 2680 | 1,094,000 | 698 | 574,000 | 555 | 675,000 | 2,444,000 | ||
627 | 101,000 | ||||||||
稲毛 〃 | 2681 | 502,000 | 482 | 111,000 | 695 | 289,000 | 556 | 482,000 | 1,673,000 |
705 | 289,000 | ||||||||
千葉市 〃 | 2679 | 1,277,000 | 375 | 79,000 | 375 | 580,000 | 576 | 2,082,000 | 5,984,000 |
594 | 578,000 | ||||||||
680 | 578,000 | 577 | 232,000 | ||||||
579 | 578,000 | ||||||||
今井 〃 | 3809 | 91,000 | 152 | 193,000 | 375,000 | ||||
5936 | 91,000 | ||||||||
蘇我 〃 | 3808 | 191,000 | 430 | 105,000 借主21,000 | 289 | 1,234,000 | 186 | 964,000 | 2,668,000 借主21,000 |
5932 | 174,000 | ||||||||
生浜 〃 | 3807 | 730,000 | 499 | 126,000 | 534 | 482,000 | 543 | 116,000 | 1,991,000 借主16,000 |
157 | 75,000 | 544 | 202,000 | ||||||
借主16,000 | 545 | 260,000 |
昭和二十六年に免許された漁業権は、昭和三十一年に、区画・定置漁業権の切替えが行われた。昭和三十六年に共同漁業権を含め、第二回目の全面切替えが行われる予定であったが、漁業権存続期間特例法により二年延長された。昭和三十八年九月一日に共同は十二年間、区画・定置は七年間の社会経済的あるいは自然的変化に即応した新漁業権が改正漁業法に基づいて全面的に切替えられた。
千葉地区における変化についてみると、生浜地先が消滅し、それまで検見川・稲毛の共有であった箇所が分離され、更に、区画漁業権では検見川は幕張地区への共有部分を作った。またほかからの入漁を認めることでは幕張地区にのみ二五〇柵の入漁を拒んではならない条件が残った。
この切替えによる存続期間は、昭和四十八年八月三十一日まで有効であったが、その後進行する埋立事業によって有効期限を待たず、漁業権漁業は消滅していったのである。