総合旅客輸送の実態―国鉄稲毛駅の場合

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 東京陸運局では、昭和四十五年六月に「東京の近郊都市における鉄道駅を中心とする総合旅客輸送調査」の報告書を出した。上尾・稲毛・藤沢・綱島・相模大野・鶴川の六駅を調査対象としている。この中から、昭和四十五年三月十七日に調査した稲毛駅の場合の概要を紹介したい。

 当日、稲毛駅の乗降人員は四万五二二二人である。これを時間帯別にみると、七~八時台にピークがみられる。これは、乗車人員は主として通勤・通学者を意味し、降車人員は通学が主で、内陸工業などへの若干の通勤者である。第二のピークは一七~二〇時過ぎまで続く。これは朝の逆現象である。これをバス輸送と比較すれば、稲毛駅でのバス降車人員が朝のピークをつくり、鉄道の乗車人員のピークを、同じ人々がつくっている。夕方のピークも逆に考えればよい。バスを運行系統別にみれば、朝は、稲毛団地、あやめ台団地、宮野木市営、千葉寺発の路線が多く、夕方はその逆になっている。したがってバスは国鉄稲毛駅と住宅地を結ぶパイプであり、鉄道の支線的機能を果たしているといえる。また、一般的に通勤、通学の朝のピークからやや遅く乗降客が若干多くみられる。主婦の買物や園児の付添いなどが考えられる。

6―36図 稲毛駅を中心とするバス運行系統図

 次に、ハイヤー、タクシーの利用をみると、朝のピークは通勤・通学者の駈込みが降車のピークをつくっている。しかし、八~九時台の乗車ピークは、若干の通学者のほかは業務や私用と思われるが明らかではない。最大のピークは二一~二二時台にあらわれる。終バス近くの長い待時間帯と終バス後である。特に、北口に利用者が多く、表口の約二倍の人数になっている。また、朝・夕のピークのほか、ハイヤー、タクシーは一日を通して極めて高い利用率を示している。これは、稲毛駅を経由するバス路線が、団地中心路線にかたよっているためと考えられる。したがって、業務や私用の目的を果たすのに機動力のあるタクシーやハイヤーが利用されると思われる。

6―37図 鉄道,バス,ハイヤー,タクシーの時間帯別利用状況(稲毛駅)

 最後に、ハイヤー、タクシーの行先別分布から稲毛駅の駅勢圏をみたい。国鉄稲毛駅は二キロメートル足らず離れて西千葉駅、二・五キロメートルほどに新検見川駅があり、その間にせまい駅勢圏をもっている。海岸方面では稲毛海岸の埋立地にある稲毛第一、稲毛公務員、稲毛海岸三丁目などの団地と稲毛町、稲丘町などで、黒砂台は西千葉駅との接点となっている。また、幸町団地は西千葉駅勢圏とみてよい。台地側では、穴川、天台、あやめ台、長沼、宮野木、園生、小中台などの範囲で、千草台団地は西千葉駅の勢力範囲になると思われる。これらは、バス路線系統とも深い関係があり、稲毛駅利用者の大部分が通勤・通学者であることから通勤圏をも示唆するものである。稲毛駅の北口前は、銀行、大型スーパーなどが進出してにぎわいをみせてきた。背後に七~八万人に及ぶ人口をもち、なお人口増加の可能性が大きいこの地域は、今後、更に大都市近郊型の色彩を強めていくと思われる。

6―38図 構内ハイヤー,タクシーの行先別分布(稲毛駅)