パーソン・トリップ調査の概要を中心に

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 まず、昭和四十五年十月一日の国勢調査における千葉市の昼間人口、就業者、通学者の流出入状況の概要をみたい。

 昭和四十年の常住人口は三三万二一八八人だったが、五年後の四十五年は四五パーセント増の四八万二一三三人である。しかし、流出人口の比率は五年前よりやや大きくなり、昼間人口は常住人口の九九・八パーセントだったものが九七・〇パーセントの四六万七六五二人となった。これは、流入人口を上まわる就業、通学のための流出人口が増加したことを意味する。千葉市で就業または通学する者は二三万四七六九人、このうち六万五七四三人は他地域からの流入人口である。また、千葉市に常住する就業者と通学者は二四万九二五〇人で、そのうち八万二二四人は他地域への流出人口になっている。

 流入地域と流出地域を比較すれば、流入地域の方が広範囲で、千葉市を中心にほぼ同心円状に拡散していく。これに対して、流出人口は総武線沿線から東京に広がり、中でも東京へは流出人口の六四パーセントに当たる五万一三二五人が就業、通学のために流出している。

6―39図 千葉へ流入する就業・通学者 (昭和45年10月1日(国勢調査))
6―40図 千葉市から流出する就業・通学者 (昭和45年10月1日(国勢調査))

 このような流動を都市交通の機能から総合的に調査した結果がある。人の起終点的生活行動(パーソン・トリップ)調査である。これは、昭和四十三年度に引き続いて四十四年度に実施したもので、『東京都市群パーソン・トリップ調査報告書から―東京五〇キロ圏居住者の生活行動調査結果―』(一九七〇年、建設省、千葉県ほか一都二県一市)として報告されている。パーソン・トリップ調査は、人がいかなる目的をもって起点から終点へ移動するか、交通手段は何か、交通量はどれほどかなどを把握し、当該地域における交通パターンを知ろうとするものである。以下、報告書を資料にして、千葉市に関する内容を要約してみたい。

 パーソン・トリップ調査(実査)の概要

・対象地域 東京を中心とするほぼ五〇キロ圏の範囲

・調査対象者 対象地域に居住する五歳以上の全居住者、約一、九五〇万人

・フレームと抽出率 住民登録簿(四十三年七月一日現在)から、二パーセントのランダムサンプル

・調査方法 調査員による調査票の説明配布、留め置き、面接回収調査

・調査対象 指定した調査日の午前三時から翌日の午前三時までの、二四時間の全生活行動

・調査員 民間の専門調査員(全体の約四分の三、中心市街地部)、市町村職員(全体の約四分の一、周辺部)

・調査年月日 昭和四十三年九月十七日(火)~同年十一月十五日(金)までの火・水・木・金曜日、

・回収率 約八五パーセント

・調査内容 「個人属性」(職業、産業、運転免許の有無)、「世帯属性」(所得、自動車の保有状況及び使用状況)、「トリップの特性」(発着場所、発着時刻、交通目的、利用交通手段、交通手段変換場所、手段ごとの所要時間、自動車運転者についてのトリップの特性)

・ゾーン数 千葉市の場合、全域が大ゾーン番号四〇になっている。また、その中を、市街地域として臨海部を中心に中ゾーン番号四〇一、周辺部は中ゾーン番号四〇二と二ゾーンに分けてある。

 千葉市の場合、昼・夜間人口の差があまり大きくなく、一日中大体同じような人口をもち、変化は激しくない。また、千葉市へ出勤してきた総交通量約九万人のうち、約七万人は千葉市内に自宅をもつ者で、県外からの出勤者はほとんどない。これは、昭和四十五年の流出入調査でも同傾向で、他県からの流入者はわずか四パーセント、千葉市以外からは二八パーセントとなっている。これに対して、千葉市から出勤する総人数は約一一万人で、このうち約八万人は県内へ出勤しており、千葉県外への出勤者は約三万人と少ない。これを昭和四十五年の流出入調査でみると、千葉市からの流出は三二パーセント、県外は全体の二一パーセントで県外流出の比率はやや高くなっている。これらから、千葉市は東京への通勤者は増加の傾向にあるものの、むしろ同一市内における移動が圧倒的に多く、短距離、短時間の流動である。これは、千葉市が一応の独立した生活圏(通勤交通に対する)をもっているといえよう。

6―41図 夜間人口に対する昼間人口の構成比率 (千葉市の市街地部)

 次に出勤交通の交通手段をみると、千葉市では徒歩のみによる通勤は全体の約一六パーセントである。また、鉄道を少しでも使った出勤交通は約三〇パーセントとほかの都市群より低くなっている。一方、自家用車やバス利用者はそれぞれ約一九パーセントで、ほかの都市群にくらべて高く、千葉市の都市交通の特性があらわれている。

 千葉市を目的地として流入する場合、どんな交通手段によるかをみると、最も高率なのは徒歩の約六〇パーセントである。(この場合、交通手段は「代表交通手段」を示したものである。例えば、自宅から歩いて電車の駅まで行き、そこから電車に乗って買物先付近で下車し、更にタクシーで買物先までいったトリップがあった場合、自宅から買物先までの一連の行動を買物という「目的トリップ」といい、その目的達成のための徒歩、電車、タクシーを「手段トリップ」としている。この交通手段は、あらかじめ定めた優先順位――①鉄道②バス、③自動車、④タクシー、⑤二輪車、⑥その他、⑦徒歩――があり、優先順位の高いものをそのトリップの「代表交通手段」とした。そこで、例の買物のトリップの場合は、代表交通手段は鉄道になる。)次いで、バスが一二パーセント、以下、鉄道一一パーセント、乗用車八パーセントなどが続いている。これは、ほかの都市群とくらべると、鉄道、タクシーが低く、バス、乗用車が高くなっている。

 次に、千葉市へ何の目的で流入するかをみると、最も高いのは帰宅で四五パーセント、三七万一〇〇〇トリップである。次いで、勤務が一三パーセント、買物が一三パーセント弱と続き、以下、通学一一パーセント、業務九パーセントである。これは、千葉市が住宅都市の色彩をもつ一方で、地域社会としてのまとまりをもっていることを示している。また、巡回トリップ状況をみると、買物が七三パーセントでほかの都市群に比較して低く、逆に業務が二六パーセントと高い。更に、千葉市中心地では買物は六七パーセントと低下し、逆に業務が三二パーセントと高くなる。これは、都心的性格の強い地域は業務の比率が高くなることを意味する。

6―73表 着目的別トリップ数及び構成比表
単位:千トリップ
着目的帰宅勤務先へ業務通学先へ買物レジャー合計
ゾーン
都市群全体41.315.810.69.212.410.7100.0%
19,9887,6745,1174,4316,0055,19648,411
40 千葉市44.913.09.010.512.99.7100.0%
371108758610680826
401 千葉市中心40.815.08.611.014.410.2100.0
2428951658560592
注:左上の数字は着目的別の構成比(%)

(『パーソン・トリップ調査』より)