千葉市の経済は、昭和三十年ころから成長が激しくなり、驚くべき発展をした。それはまたあまりにも急速な変化をもたらした。そのために、千葉市経済の各部門の中にアンバランスが生じ、各部門の相互間に期待される好ましい波及効果がいまだに出現していない。市域内に策定された国々公共機関による大型プロジェクトに対して、千葉市が策定すべきサブプロジェクトが十分に結合して、千葉市の経済全体の発展が成熟するまでにはいたっていない。なによりも千葉市という都市は成長過程にあって、現在の五〇万人規模の中都市から一〇年以内に百万人規模の大都市に急速に成長することが、千葉市の経済に多角的な将来問題を発生させていることである。
千葉市の経済各部門はそれぞれが急速に発達しているが、その部門の中はアンバランスである。この傾向は特に商業・工業部門においていちじるしい。ここで商業部門をとりあげてみれば、百貨店・大型店の増加に対して中・小商店の停滞、中心商店街の二極化、中心商店街に対する副中心商店街の成立、などの諸問題がある。これらの諸問題を集約すれば、中心商店街の再開発問題となる。百貨店・大型店の増加は、都市人口に対する店舗数では全国一の過密となり、売場面積一平方メートル当たりの年間販売額も全国平均より低いという過当競争となっている。百貨店・大型店間の競争が激しいために中・小商店は経営が困難となり、中心商店街にある商店の中で、百貨店・大型店の主力商品と競合する業種の商店は転・廃業に追い込まれたものもある。中心商店街が発展する過程にはこのようなことは避けられない。百貨店・大型店の大部分は外来資本であって、地元資本の百貨店は扇屋百貨店のみになった。地元資本による三大百貨店であった奈良屋は三越系となり、田畑は西武系となった。そのほかの百貨店・大型店は最近に進出した東京資本と関西資本である。これらの外来資本の進出過程において、中心商店街は二極化した。中心商店街から六百メートル離れた国鉄千葉駅前に駅前商店街が形成された。国鉄駅は、もともと中心商店街から離れて立地するので、その都市に人口が増加すれば、駅前は商店街の立地条件にすぐれている。全国的にみても、人口数十万人までの都市のうち、最近急速に発展している都市は、従来の中心商店街と新しい駅前商店街とが成立している。しかし、百万都市にもなれば中心商店街は駅前商店街ではなくなる。駅前商店街は駅というターミナル機能を立地条件としている。百万都市の中心商店街は多くは業務地区・盛り場と結合している。千葉市の中心商店街の二極化は一時的な現象である。むしろ、中心商店街は、その発展対策に欠けていることがある点を反省すべきであろう。
中心商店街の問題を巨視的にみれば、現在の二極化は中心商店街の拡大過程の一コマである。百万都市の中心商店街は、現在の中心商店街と駅前商店街を一体化して、更に京成千葉駅の西口にまで拡大した範囲を考えなければならない。中心商店街と駅前商店街を結ぶために国鉄千葉駅と中央公園を結ぶ幅五〇メートルの広路の地下に地下公共駐車場と地下商店街の造成が考えられている。このように拡大した新中心商店街は、百万都市の都心商店街といいうるだろう。この都心商店街に対して副都心商店街を形成することを考えなければならない。海浜ニュータウンは人口二四万人の巨大住宅街であるが、これは住宅団地の集団ではなくて、一つの都市であり、この中に高度の商業施設が成立するだろう。また東南部住宅団地といわれる団地は計画人口九万人であり、隣接する市原市の草刈・瀬又の住宅団地の人口と合計すれば、この人口集積は十数万人である。したがって、かなり大きな商業施設が形成されるだろう。この二つの商業施設は、百万都市の副都心商店街となるだろう。
千葉市が百万都市となり、副都心商店街が形成されるならば、新都心商店街はその上位の中心としての位置を保つために二つの事業を行わなければならない。一つは、これらの副都心と周辺にある大規模な住宅団地を新都心に結合する都市交通体系の建設である。これはバスターミナルの建設、市内モノレール、地下鉄の延伸、更にムーブレインの建設であろう。他の一つは、中心商店街の再開発である。中心商店街の人々は再開発の投資を確実に効果あらしめるために、都市交通体系の確立が先行条件と考えている。しかし、都市交通機関の建設には費用と時間に種類によって長短があり、中心商店の再開発も長期事業である。それに対する中心商店街と駅前商店街との競合は、日日に当面することであり、経済上の問題として早急に計画を決定して事業の施行が望まれている。