院内小学校言語治療教室

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 本市における特殊教育中、院内小学校での言語治療教室は日本のこの分野における指導的立場に立っている。昭和三十四年四月市内の大森小学校において、精神薄弱児を対象にした特殊教育にあたっていた大熊喜代松教諭は、院内小学校に言語治療教室を開設した。発音など、言語の障害から、普通の教育に適応する能力がありながら精神薄弱児とみなされている児童生徒に、言語治療教育を実施しようというのがその出発点であったらしい。大熊教諭は専門医らの協力もあったが、独創的工夫を加えて、公教育としては、日本で最初の試みとしての言語治療教室を始めた。昭和三十六年、当時の荒木文部大臣が当教室を視察したのが契機となり全国的な反響を呼び、次第にその内容を充実していった。

 通称「言語治療教室」といわれているが、教室でなされる指導は個別指導が中心で、特にこの児童に集団の中での指導が必要と思われるときのみ、グループでの指導がなされる。昭和四十五年以後は全国を対象に教育がなされた。遠く北海道や九州からこの教室に入学するため、保護者と共に千葉市内に寄留して通学する者が多かった。近年、全国的に言語治療教室開設が増加するにつれ、本校も千葉市内の児童を対象に要治療児を一週二~三日、一日一時間の治療を行っている。児童はほかの時間は通常の学級において、普通教育を受けている。昭和四十八年度一九名の児童がこの教室を卒業しているが、入学時と卒業時の話し言葉をテープレコーダーに吹き込んであるのを比較するとき、その進歩の著しいのに驚くばかりである。言語治療は、早期発見、早期治療が何より重要で、保育所、幼稚園に一教室設置することが望まれている。そのほか有能な指導者の養成、保護者の負担経費の軽減等も望まれている。