幼稚園

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 幼稚園に関する規定は明治五年制定の「学制」では「幼稚小学ハ男女ノ子弟六歳迄ノモノ小学ニ入ル前ノ端緒(たんしよ)ヲ教ルナリ」と定められ、幼稚園は小学校の種類の一つに数えられていた。しかしこの「学制」による幼稚小学は実際には行われなかった。わが国の幼稚園の模範となった東京女子師範学校付属幼稚園が開設されたのは明治九年十一月のことである。次いで明治十二年九月に公布された「教育令」は幼稚園を学校と区別していたが、以後幼稚園は学校とは別個のものとして、文部省の管轄の下に、府県知事の監督を受けることとなったのである。

 千葉市における最初の幼稚園開設は明治二十四年(一八九一)四月のことである。東京女子高等師範学校卒業生小杉くら子を園長として、旧信之館(現県立図書館敷地)を園舎に開かれた千葉幼稚園がこれである。園児二五人、一カ月四〇銭以上一円以下の保育料と別に月一〇銭の玩具(がんぐ)料を徴収していた。この千葉幼稚園は二年後、園長の転出にともなって閉鎖のやむなきに至っている。明治三十二年六月、文部省は「幼稚園保育及設備規程」を公布して、幼稚園の組織、保育内容等について法的規定を設け、その設立を促した。この機運を受けて、千葉県教育会は旧女子師範学校の校舎の一部(現教育会館敷地)を借用して、明治三十六年六月、保母三名、幼児六〇名の幼稚園を開園している。明治四十一年四月以降は千葉女子師範学校付属代用幼稚園に指定され、同校生徒の保育実習の幼稚園となった。大正十一年四月、千葉県教育会付属幼稚園は県に移管され、千葉女子師範学校付属幼稚園と改称し、四年後には女子師範学校敷地内に移転した。

 戦前、千葉市内には公立では前記の女子師範付属幼稚園のほか、検見川町に検見川幼稚園があり、私立では葛城町に長戸路政司が経営する自由幼稚園、本千葉町に岸辺福雄を園長とする昭和幼稚園、東本町に奥山作市を園長とする羔(こひつじ)幼稚園があった。

 太平洋戦争中、戦災、移転、廃園があって、私立では羔(こひつじ)幼稚園のみが経営を続けるが、昭和二十二年四月、「学校教育法」の制定によって、幼稚園は学校教育の一環として、独自の位置が与えられるにともない、昭和二十四年ころから、千葉市内においても幼稚園の設立がみられるようになった。昭和四十七年四月現在市内の幼稚園一覧は六―一〇五表のとおりである。近年、全国的に幼児教育の重要性が叫ばれ、五歳児の全員教育機関への収容が、社会的要望となっている。本市においては小学校入学児童のほとんどは幼稚園を経て、入学しているのが実情である。六―一〇五表にあるように、千葉市における幼稚園は六九園であるが、千葉大学付属と土気の二園を除いては私立幼稚園である。

6―105表 市内幼稚園一覧
国公私立別幼稚園名所在地園長名職員数園児数創立年月
千葉大学教育学部付属幼稚園弥生町1―33奈良坂昂9126昭.18.4
土気幼稚園土気町1626―5石井肇5125昭.41.4
羔(こひつじ)幼稚園東本町5―1奥山作市12233昭.4.4
結城幼稚園長洲町1―207森田彦英14297昭.24.3
聖マリア幼稚園汐見ケ丘11―11小倉信雄8120昭.24.3
翠幼稚園春日2―12―10尾形ひでよ9180昭.24.9
昭和幼稚園長洲町1―6―8葛岡吉之助340昭.27.6
泉幼稚園末広町1―17―2大溝栄子7139昭.27.6
双葉幼稚園新田町164豊田陽子7154昭.28.3
稲毛すみれ幼稚園稲毛東1―14―13西沢貞子20470昭.28.5
登戸幼稚園新千葉町3―14―18大森登代9203昭.28.7
ひまわり幼稚園松ケ丘町611塩田繁次11221昭.28.7
千葉文化幼稚園桜木町353高山照襄7160昭.29.3
弥生幼稚園穴川1―4―6神野栄三8150昭.29.3
青い鳥幼稚園検見川1―48芦谷秋子7145昭.30.2
愛隣幼稚園轟町5―2―12木下弘人6145昭.30.2
はまの幼稚園浜野町1252畠山久子14282昭.30.3
あけぼの幼稚園幕張町4―639吉野千代次5114昭.30.5
穴川花園幼稚園穴川町375円山主計18355昭.31.3
松ケ丘幼稚園仁戸名町552長谷川久仁子11277昭.35.12
大巌寺幼稚園大巌寺180長谷川匡俊6147昭.36.2
作草部幼稚園作草部911―1大塚常好12250昭.36.6
梅乃園幼稚園矢作町939―6花沢享7135昭.38.5
大宮幼稚園大宮台6―10―3御園菊夫11250昭.39.2
白梅幼稚園誉田町2―24野崎積善7149昭.39.4
稲毛幼稚園稲毛町5―100内山たね11325昭.39.4
仁戸名幼稚園仁戸名町616長谷部吉治6120昭.40.3
九重幼稚園稲荷町329伊藤徳貞7117昭.40.4
小ばと幼稚園天台1―7―17村松美枝子12250昭.40.9
泉第二幼稚園小倉台3―11―1大溝栄子14360昭.41.4
こまどり幼稚園宮崎町417斉藤美佐子8203昭.41.4
都幼稚園都町919町長登起6153昭.41.4
園生幼稚園園生町956松戸豊治郎12206昭.41.4
葛城幼稚園葛城町345長谷川平太郎789昭.41.4
みのり幼稚園貝塚町1200岩館幸子8157昭.42.4
白ばら幼稚園天台4―92―1伊藤修次13319昭.42.4
かもめ幼稚園園生町146―1鈴木芳恵9238昭.42.4
花園幼稚園花園町1―3―9細谷延代7201昭.42.4
台畑もつこく幼稚園犢橋1444鶴岡正次6129昭.42.4
聖母マリア幼稚園辺田町552羽場勝子15238昭.42.4
あやめ台幼稚園園生町468―1神野一子18418昭.42.5
さざれ幼稚園幕張町5―241大野久枝7127昭.42.4
千葉明徳学園幼稚園南生実町1412谷川久治5104昭.42.5
清流幼稚園弁天4―7―30来馬真一8107昭.42.5
椿森幼稚園椿森1―22金籠省三792昭.43.4
ちしろ幼稚園千城台北2―18―1石橋文子8225昭.43.4
葵幼稚園仁戸名205関英一5112昭.43.4
ルリコウ幼稚園富岡町208―1山口隆芳541昭.44.3
結城第二幼稚園星久喜町1148森田宏彦9171昭.44.4
信徳寺あさひ幼稚園長作町610秋山きよ子547昭.44.4
まこと第二幼稚園花見川6―18山口嘉三10323昭.44.4
花見川幼稚園花見川4―14―101桜本能夫9223昭.43.11
第二ちぐさ幼稚園花見川8―19井元徳三郎13268昭.44.5
千葉幼稚園花見川1―29由田浩10283昭.44.12
こざくら幼稚園平山町65―1江尻藤男5106昭.45.1
貝塚幼稚園貝塚町1138渋谷敬敏10200昭.45.1
新検見川幼稚園畑町638吉野静枝6122昭.45.4
ほまれ幼稚園誉田町1―1007西郡喜代子6123昭.45.4
千葉白菊幼稚園幸町2―12―8林清茂9257昭.45.4
土岐幼稚園緑町1―5―17豊田いと6167昭.45.4
大沢学園幸町幼稚園幸町2―9―3大沢浜次郎12300昭.45.11
千葉さざなみ幼稚園高州町1―1―20大塚武男557昭.46.3
なでしこ幼稚園幸町2―17―3佐久間弘太10248昭.46.3
のぞみ幼稚園千城台西町1―31―1浅香敏雄6120昭.46.3
こてはし台幼稚園こてはし台1―19―1大川宏之6172昭.47.4
植草学園幼稚園弁天町79―3植草勅寿450
青い鳥第二幼稚園さつぎが丘2―13芦谷憲二77
千城台南幼稚園千城台南2―8―14宮原典子6100
へいわ幼稚園千城台東1―6―1奥山作市8119

(千葉市幼稚園協会広報委員会調べ)

 私立幼稚園は、幼児教育機関という公的な面をもっている一方、営利企業としての側面をも併わせもっている。そのため公立であれば月額千円ほどの保育料が、私立でも平均五千五百円ともいわれ、幼児教育一般化のなかで、このような父兄負担の問題が残るわけである。

 市では公私の格差是正をふまえて、この教育を積極的にすすめるために、市内に在住する四、五歳児全員を対象に「私立幼稚園就園奨励費補助金制度」(昭和四十九年度は園児一人につき九千円)を実施するほか、低所得家庭を対象として「所得制限付就園奨励費補助」や、幼稚園教諭養成のための奨学金制度を確立するなど、振興のための諸施策をすすめている。