社会教育

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 戦後の教育改革は学校教育のみでなく、社会教育の分野においても一大変革が実施された。戦前の統制的、教化的性格から、戦後の社会教育は国民の自由な自発的意志による活動を指導、助言する方向に転換したのである。戦後間もないころは「青少年の不良化防止」と「公民館活動の振興」が社会教育の重要課題であった。このうち、公民館活動について、昭和二十一年七月、文部省は「公民館設置運営について」と題する通達を発している。この通達は公民館が社会教育施設の中心的役割りを果たすよう求めているが、千葉市内においても、公民館が社会教育施設の中核となって、今日に至っている。

 現在、市内の公民館は各地区の実情に即した社会学級及び各地区の団体による自由講座を開催し、地域の要望に答え、また、講師に学校関係者を招いて、学校教育と社会教育の連携に努めている。例えば、市内の轟公民館が昭和四十六年度に実施した社会学級は、六―一〇七表のとおりである。轟公民館では高齢者が都市化現象によって、孤独感に襲われやすい弊害を克服し、新しい人間関係を形成するため、高年齢層を対象とした各種の試みを計画、実行している。当公民館は完全なものを実施しようと思案にくれ、結局何も実施できなかったというのではなく、まず実施して、次第にこれを改善する方策をとっているのが特色で、老人に生きがいを与えるため、公民館の果たすべき役割りを自覚し、着実にその成果をあげている。また、法律問題という比較的堅苦しいが、日常生活で避けられない問題を具体的に身近かな事象と結び付け、平易に解説し、新しい人間関係樹立に資するとともに、市民意識の高揚を図っている。なお、当公民館の自由講座といえる轟公民館クラブの活動状況は六―一〇八表のとおりであるが、これらクラブの中には社会学級が契機となり、受講者が社会学級終了後も、継続して活動する目的で公民館クラブとしたものが多い。千葉市内の公民館設置状況は六―一〇九表のとおりであるが、千葉市教育委員会は各中学区に一カ所必ず公民館を設置するとの長期計画を実施中であり、しかも、昭和四十年度から逐次公民館に専任職員を配置しているので、公民館は単に社会教育の場所を提供するのではなく、すすんで、市民の生活、文化水準の向上と市民意識の育成にあたる核としての存在になると思われる。

6―107表 轟公民館社会学級
(1)轟公民館社会学級実施状況
教室名回数時間申込者( )内は女子修了者数修了者歩合%
亀の子学級102031(27)2374
やさしい家庭の法律102034(32)1544
季節の中華風料理112240(40)2972
手あみの基礎122448(48)2553
誰にも画ける油絵225047(32)3063

(昭和46年度『千葉市社会教育の現状』)

(2)轟公民館社会学級
亀の子学級(高齢者対象)の内容
月日学習課題学習内容学習方法
6.19老人をめぐる社会情勢社会面から老人問題をあげながら現実的な事実を認識して行く講義
7.3地域社会と老人の家庭生活の実態話し合える家庭の人間関係とは,真に求めているものは,身近かに取り組む講義
話し合い
7.17日本の祭りを考えよう祭礼を通じ日本社会の風俗,習慣の変遷をしる映画「日本の祭り」
8.1観蓮会――ハス祭り――大賀ハスを通して古代社会の研究見学
8.7家庭生活のあり方
――今日的状況――
家族制度の変遷から,孫を通してそれらの相違を乗り越えようと努力する1人の老人をとらえる「わたくしのおじいちゃん」映画
フイルム
フォーラム
9.4レクリエーションの持ち方同上から孫を通して1つの役割の形を理解し,実践してみよう実技
9.18市議会見学私たちのくらしと市政について考える見学
10.2食生活と健康管理毎日の生活の中で知っておきたい食事養法と老人病の予防講義
話し合い
10.16社会保障と老人生活福祉の理念法の精神,福祉行政のあり方について考えてみよう講義
11.16これからの老人生活と課題家族の中で先輩とは,地域での役割等をとおしてこれからの生活の課題は何か講義
話し合い

(昭和46年度『千葉市社会教育の現状』)

(3)やさしい家庭の法律の内容
月日学習課題学習内容
6.15開講式日常生活と法律との関係
7.13夫婦関係夫婦間の権利義務,内縁,離婚,その他
7.20親子関係認知,扶養の義務
8.10相続関係(Ⅰ)嫡出子・養女の遺産,再婚した父の相続
8.17 〃  (Ⅱ)相続の放棄,借金・その他の相続
9.14保証,損害賠償身元保証人,弁償と示談,犬と飼主の責任
9.21近隣関係境界線,増築,通行権,日照権
10.12家事調停民法の解釈
10.19裁判所を訪ねて法廷見学
11.9民法と家族生活憲法理念と民法(家族生活)との関係

(昭和46年度『千葉市社会教育の現状』)

6―108表 轟公民館クラブ(自由講座)
クラブ名開催 曜日 時間会員数会費(円)
茶道いずみ会毎土13―20H21600
轟民踊会毎水19―2110500
茶道表千家毎水13―158700
華道草王会毎火18―2015500
手芸双葉会第2―4金10―1210600
轟女声合唱団第2―4火10―128500
轟謡曲クラブ毎土13.30―1625500
料理睦会第2―4木10―1215300
俳句松の会第1―3火13―1610500
和裁クラブ毎金10―1225500
洋裁クラブ毎水10―1222800
ペン習字クラブ毎金13.30―15.3023500
水彩画クラブ毎火13.30―15.3015700
日本画秀峯会毎金18.30―21151,000
油絵エコールドチバ毎火19―21251,000
家庭園芸クラブ第2金13―1516500
轟バレエ母の会毎火―金15―19351,500

(昭和46年度『千葉市社会教育の現状』)

6―109表 市内公民館一覧
館名創設年月日日平均利用団体数日平均利用人数(人)
花園公民館昭.28.11.13.8101
幕張公民館昭.28.11.12.2101
犢橋公民館昭.39.4.11.031
黒砂公民館昭.32.2.11.336
検見川公民館昭.35.11.12.583
松ケ丘公民館昭.35.11.12.599
轟公民館昭.36.9.304.075
小中台公民館昭.38.4.13.076
稲毛公民館昭.40.7.11.333
生浜公民館昭.42.5.20.826
誉田公民館昭.43.8.10.725
泉公民館昭.32.5.1
神明公民館昭.44.4.11.828
椎名公民館昭.44.4.10.410
土気公民館昭.25.4.181.056
葛城公民館昭.46.6.11.436
宮崎公民館昭.46.6.11.638
千城台公民館昭.47.5.1

(昭和46年度『千葉市社会教育の現状』)

 今後とも公民館が社会教育の中心的役割りを果たすと思われるが、近年、社会の急激な工業化、都市化、情報化現象や老齢人口の増加、核家族化、国民所得の増大、労働時間の短縮などによって、社会は大きな変容を遂げつつある。これら社会条件の変化は社会教育に新しい、そして多様な課題を投げかけているといえよう。昭和四十六年、中央教育審議会、社会教育審議会は相前後して、今後の教育改革について、重大な内容をもつ答申を文部大臣にしている。この答申の中で両審議会は生涯教育の構想を示している。千葉市教育委員会は昭和二十三年の発足以来、社会教育の充実を強調、学校教育と併立して、千葉市民の教育水準の向上に努力してきた。しかし、発足当初は戦災小学校の復旧、新制中学校の設立等学校教育に忙殺され、社会教育は、補助的な役割りを果たすにとどまっていた。それが昭和三十年代の後半に至って、積極的な役割りを果たすように転換している。昭和三十五年度を基準年度とする『千葉市総合開発計画』の第四章「教育文化の向上」の重点施策の一つに「社会教育施設の総合的強化」をあげ、「市民の生活、知的水準、文化意識の向上に即応し、また、人的能力の開発を積極的に推進するものとする」と宣言、このために必要な社会教育施設の整備充実とならんで、その施設の有効な利用を計画していた。とりわけ、従来の社会教育が、青少年教育、成人教育、文化教育など各々別個に運営されて、総合的、有機的関連に欠けていたのを改めている。生涯教育という言葉は使用していないが、今後、市民の社会教育に対する要望が増大するのを予想し、総合的対策の充実という表現で、生涯教育の一環としての社会教育の充実を推進して、今日に至っている。施設関係では公民館、児童文化センター、青年館、図書館、亥鼻公園地区文化センターの建設を計画の重点にあげ、文化財の保護に努めると結んでいる。「千葉市開発総合計画」は所期の計画を達成するが社会的諸条件は計画作成時の予想をはるかにうわまわり、また、千葉市は昭和四十六年~四十八年に至る『中期三カ年計画』を発表した。この中で「市民意識を育てるための施策」として、さきの「千葉市総合開発計画」を発展させ、社会体育、レクリエーション活動の振興、市民文化の高揚、コミュニテイ活動の推進等を目標に挙げ、その実現に努力した。本計画の昭和四十八年度末までの実績見込額、達成率は六―一一〇表のとおりで、所期の計画を全体としては達成している。

6―110表 千葉市中期3ヵ年計画の実績概要
――市民意識を育てるための施策――
(単位 千円)
当初計画事業費3ヵ年実績見込額当初計画事業費に対する3ヵ年の達成率
市民会館の建設406,600651,451160.2
図書館の建設101,020(126,000)255.2
132,233
公民館の建設(79,800)94,80391.3
24,000
青少年センターの建設280,864336,995120.0
サイクリングコースの造成14,95047,395317.0
地区スポーツセンター(校庭の開放)15,62919,971127.8
市民大学講座の開設3,5002,29865.7
動物公園の造成2,0004,000200.0
文化財の保存29,800203,374682.5
広報広聴活動の充実104,716106,203101.4
UHFの効果的利用73,31272,21698.5
地域活動・グループ活動の助長38,79238,63199.6
団体推進と市民総参加382,770596,805155.9
祭の復活500950190.0
中央コミユニテイセンター建設34,0001,0002.9
(79,800)(126,000)
1,512,4532,308,325

(『中期3ヵ年計画の実績概要』千葉市企画調整局)

 千葉市教育委員会は昭和四十六年度の『社会教育行政の重点目標』を次のように定めている。

 一 生涯教育の推進、強化

 二 市民生活に密着した健康、体力づくりの促進

 三 青少年健全育成の充実

 四 市民文化の向上

 五 社会教育諸条件の整備促進

 右の五項のうち、生涯教育の問題を第一に挙げ、諸調査を実施して、市民生活の実態と希望を正確に把握し、長期的な実施計画の樹立によって、生涯教育の一環として重要な役割りを担っている社会教育の推進を図っている。教育といえば、とかく学校教育、青少年教育のみに限定しがちであったが、教育の場を学校から家庭、社会に広め、自然環境さえも社会教育の場としてとらえ、社会教育の推進が市民に生きがいと心の豊かさを与えるものと関係者は主張している。

 昭和四十六年度中における本市の社会教育活動のうち、さきに述べた公民館事業を除く各事業活動の概略は、次のようである。