モータリゼーション化時代を迎え交通戦争さながらに、交通事故により日々多くの貴重な人命が損傷を受けていることは、まことにいたましい限りである。特に、千葉市は京葉臨海工業地域の中枢部に位置しており、その上に、首都東京に隣接している関係から、車の往来は頻繁であり、交通環境は、年々悪化の度を強めてきている。
六―一四九表は、昭和四十七年度における千葉市の交通事故発生状況をまとめたものであるが、市内で発生した事故件数は、三、二八二件で、県全体の一七・五パーセントに当たり、昭和四十六年度に比して、一五二件の増となっている。なお、一日平均の事故件数は、九・一件である。
警察署 | 発生件数 | 死者 | 傷者 | 人口千人当たり死傷者 | ||||||||||
47年 | 46年 | 増減 | 47年 | 46年 | 増減 | 47年 | 46年 | 増減 | ||||||
数 | 率(%) | 数 | 率(%) | 数 | 率(%) | 47年 | 46年 | |||||||
千葉中央 | 2,459 | 2,199 | 260 | 11.8 | 69 | 65 | 4 | 6.2 | 3,319 | 3,068 | 251 | 8.2 | 8.0 | 7.1 |
千葉南 | 823 | 931 | ▲108 | ▲11.6 | 13 | 18 | ▲5 | ▲27.8 | 1,067 | 1,198 | ▲131 | ▲10.9 | 9.8 | 11.1 |
計 | 3,282 | 3,130 | 152 | 4.8 | 82 | 83 | ▲1 | ▲1.2 | 4,386 | 4,266 | 120 | 2.8 | 8.6 | 8.4 |
県全体 | 18,751 | 19,481 | ▲730 | ▲3.7 | 660 | 695 | ▲35 | ▲5.0 | 25,448 | 26,789 | ▲1,341 | ▲5.0 | 7.3 | 7.7 |
(県警『交通事故発生状況』昭和47年度)
また、市内における年間の死傷者は、四、四六八人を数え、昭和四十六年度に比して、一一九名の増になっている。人口千人当たりの死傷者は八・六人で、県全体での七・三人に比して、一・三人うわまっている。これを両署についてみると、中央署は八・〇人、南署は九・八人で南署は、中央署に比してやや高い死傷率を示している。なお、市内における一日平均の死傷者数は、一二・四人となっている。
つぎに、路線別に事故の発生状況をみてみると、六―一五〇表のとおりである。
署 | 事故状況 | 国道 | 地方道 | 県道 | 市町村道 | 合計 | |||||||
14号線 | 16号線 | 51号線 | 126号線 | 千葉茂原線 | 千葉大網線 | その他 | 千葉鎌ケ谷 | 旭船橋 | その他 | ||||
千葉中央 | 発生件数 | 258 | 243 | 98 | 184 | 39 | 56 | 1 | 20 | 63 | 123 | 1,153 | 2,238 |
死者 | 10 | 8 | 1 | 8 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 8 | 28 | 65 | |
傷者 | 405 | 349 | 133 | 286 | 59 | 71 | 2 | 26 | 85 | 170 | 1,541 | 3,127 | |
千葉南 | 発生件数 | ― | 144 | ― | ― | ― | 168 | 1 | ― | ― | 45 | 534 | 892 |
死者 | ― | 4 | ― | ― | ― | 6 | 0 | ― | ― | 0 | 8 | 18 | |
傷者 | ― | 228 | ― | ― | ― | 211 | 1 | ― | ― | 55 | 644 | 1,139 | |
計 | 発生件数 | 258 | 387 | 98 | 184 | 39 | 224 | 2 | 20 | 63 | 168 | 1,687 | 3,130 |
死者 | 10 | 12 | 1 | 8 | 0 | 6 | 0 | 1 | 1 | 8 | 36 | 83 | |
傷者 | 405 | 577 | 133 | 286 | 59 | 282 | 3 | 26 | 85 | 225 | 2,185 | 4,266 | |
県全体 | 発生件数 | 796 | 1,414 | 442 | 803 | 177 | 230 | 355 | 158 | 169 | 2,956 | 6,948 | 14,448 |
死者 | 30 | 53 | 21 | 48 | 6 | 6 | 29 | 4 | 7 | 118 | 160 | 482 | |
傷者 | 1,178 | 2,100 | 708 | 1,194 | 276 | 290 | 464 | 205 | 214 | 4,175 | 8,713 | 19,517 |
(県警『交通事故発生状況』昭46年度)
千葉市内を貫通する国道について、市域内での事故発生状況をみると、一四号線では、同路線総事故の三二パーセントに当たる事故が千葉市域で発生し、同じく一六号線は二七パーセント、五一号線は二二パーセント、一二六号線は二三パーセントであり、このことからも、国道を運行する車両は、千葉市域に入ってからかなりの事故をおこしていることになる。また、死傷者について道路別にみてみると、国道では一件当たり一・五四人、同じく地方道では一・四〇人、県道では一・四三人、市町村道では一・二七人となり、国道での事故のはげしさを数字をとおしてみることができる。
事故発生原因のうち、車対歩行者や、車対自転車といった凶器型事故は、市町村道に多く発生し、その原因のほとんどは、車の直前直後の横断による飛び出し、ならびに運転者の前方不注意によるものである。また、車対車、車単独といった棺桶型事故は、凶器型事故とは逆に、国道において多く発生し、交差点の徐行違反右折違反、車間距離不保持、酒酔(酒気帯び)運転、最高速度違反、ハンドル等の操作不確実、追い越し方法違反などを主な原因としており、道路が整備され高速化の条件が増せば増すほど、事故の恐ろしさは一層倍加されてきている。事故防止にあたっては、歩行者が交通ルールを守ることと、道路の管理と安全施設の整備や車両の整備と点検と同時に運転者一人一人による安全運転への努力も大切であろう。
市内の幼児及び小・中・高等学校児童・生徒の交通事故をみると、昭和四十六年度の事故件数は、六四四件を数え、千葉市で発生した総件数の二〇パーセントを占めている。事故の内訳も、幼児の三〇四件、小学生の二一二件といったように、幼年齢層に事故が多くみられ、この両者だけで、高等学校生徒以下の全事故の八〇パーセントを占めている。また、年間の死傷者は六九八名で、そのうち、幼・小学生は五三九名を数え、七七パーセントの高率となっている。これらの事故原因としては、歩行中における車の直前直後の横断、飛び出し、路上遊戯、幼児のひとり歩き、左側通行などによるものが多くみられ、自転車乗車中における事故原因では、他車の直前直後横断、右・左折不適当、優先通行違反、信号無視などがあげられる。一般的にみて、幼・小学生の交通事故は、増加の傾向を辿っているだけに、交通安全管理並びに安全指導について一層留意していく必要がある。
交通事故は全国的にみて、減少の方向を辿っているのに対し、本県は逆に増加している現状である。特に、京葉・東葛地域(市原・千葉南・千葉中央・習志野・船橋・市川・松戸・柏・野田の各署の管轄地域)は、事故件数にして、県全体の六〇・一パーセント、死傷者数にして五九・一パーセントに当たる事故多発地域であり、警察官の交通取締り活動も頻繁である。千葉中央署における警察官一人当たりの交通事故負担は、七・一件、同じく千葉南署は八・八件、両署をあわせると七・五件になっている。