工業化・都市化の進展により、人口は著しく増大してきた反面、地域格差もますますひろがりをみせてきている。特に過密地域は、生活環境上多くの問題をかかえているが、治安の面については、犯罪・青少年非行・精神不安からの自殺・失業・貧困などといった社会病理現象が顕著になる一方、モータリゼーション化の進行により交通事故対策も大きな社会問題になってきている。このような時点において、市民の生活の安全を求める声は強く、都心はもとより、周辺の新興住宅地域や住宅団地を含め、警察行政に対する市民の行政需要は、著しく高まってきている。
このような背景にあって、もっとも課題とされるものは、警察官の定員問題である。交通警察を一つの例にとっても、交通警察官が極度に不足し、警察官は、交通事故処理に追われて、交通補導や交通取締りなどに手が回りきれないという実情である。現在、警察官一人当たりの人口負担が、埼玉県についで全国第二位にあるという実態は、早急に解決されるべきものであろう。特に、県総人口の六〇パーセントが、京葉・東葛地域に集中している今日、警察行政の合理化、適正化を図り、可能な限りこの地域へ警察官を充当していくことも必要であろう。
治安の要諦は、犯罪の発生を未然に防止していくことにある。そのためには、防犯に関する情報をたえず市民に提供し、協力態勢をより確立していくとともに、予防パトロールを強化し、昼夜の逆転現象がみられる現在の市民生活においては、むしろ深夜から未明にかけてのパトロールを重視していく必要があろう。
また、都市の拡大、貿易港としての千葉港の活発化などにともない、犯罪の国際化、大型化、多様化ならびに青少年非行の増大などがみこまれることから、情報管理センターの整備と情報のシステム化により、情報の統御・交換・処理を的確にすすめ、警察の機動性をより一層高めていく必要がある。
警察活動は、市民の積極的な協力なくしては、じゅうぶんにその機能を発揮することはできない。市民に愛され信頼される警察として、市民と密着し、苦情の相談や防犯の診断に応ずるなど、市民サービスに徹する必要がある。今後、市民警察としての自覚のもとに、市民の身体・財産の安全にじゅうぶんなる役割りと機能を果たしていくことを期待したい。