娯楽

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 幹線道路沿いや、主要駅の近辺には、必ずといってよいほど、ボーリング場がみられるし、海岸の埋立地には工場にかわって、ミニ・ゴルフ場などの娯楽施設が造られる時勢にまでなった。

 現代は「余暇の時代」といわれているが、平日、休日とを問わず、盛り場、駅頭には人が群がり、思い思いの娯楽を求めて、生活を楽しんでいる姿がみられる。ひとむかし前までは、娯楽といえば映画の鑑賞をさし、映画館はいつも人で埋まり、特に、年末・年始といった時期には、長蛇の列をつくるという状態を呈していた。最近では、娯楽の内容も多様化し、大衆化されて、質的にも量的にも、むかしとは比較にならないほどのにぎわいをみせている。

 現在、多くの人に親しまれている都市娯楽は、つぎのように分類されている(『都市問題講座(5)社会環境』二八〇頁)。

 一 家庭娯楽

   (ア)雑誌・楽器・遊び道具類、(イ)カルタ・スゴロク・トランプなど、(ウ)碁・将棋・マージャンなど、(エ)テレビ・ラジオなど。

 二 興行娯楽

   (ア)映画・演劇・音楽会など、(イ)プロ野球・プロレス・相撲など。

 三 射倖娯楽

   (ア)パチンコ・スマートボールなど、(イ)競輪・競馬・競艇など。

 四 遊技娯楽

   (ア)玉突き・ボーリングなど、(イ)スケート・ゴルフ・ボート遊びなど。

 五 官能娯楽

   (ア)キャバレー・アルサロ・ダンスホールなど、(イ)スタンド・バー・音楽喫茶・待合など、(ウ)エログロ映画・ストリップ・トルコ風呂など。

 六 近隣娯楽

   (ア)盆踊り・演芸会など、(イ)祭礼・縁日など。

 七 清遊娯楽

   (ア)つり・狩など、(イ)ピクニック・ハイキング・動物園や遊園地見学など。


 これらは、性別や年齢により、また、生活水準や職業などにより、娯楽の仕方に相違がみられるし、娯楽そのものも伝統的なもの、斜陽化しつつあるもの、不健全・不健康なもの、大衆化されたものなどがあり、また、その参加のあり方にも相違がみられる。

 かつて娯楽の王座に君臨していた映画についてみると、昭和二十五年度は、千葉劇場・千葉銀映・ダイヤモンド・竹沢映画劇場・演芸館・新東宝(第一劇場)、新興館の七館があり、年間あわせて一一八万人の観客を動員していた。一〇年後の三十五年度になると、観客数は大幅に伸び、二十五年度の二倍をうわまわる二五六万人にも達した。しかし、観客動員力も、テレビの普及につれて次第に下降し、四十六年度においては、千葉劇場・千葉東映・竹沢映画劇場・新興館・千葉京成・京成ローザ・京成ウエスト・京成サンセット・蘇我東映・稲毛銀映・千葉ドライブインシアターといった設備の良い映画館一一館もあり、人口もむかしとは比較にならないほど大量に増加したにもかかわらず、年間の観客数は大幅に減少して、僅か一三二万人で、映画の今昔がよくあらわれていると思う。

 これとは逆に、青年層を中心にして、爆発的にブームをよんだものにボーリングがある。千葉市に初めて開設されたのは、昭和四十年十一月であるが、全国的な流行の波に乗って、つぎからつぎへと開設され、四十七年八月現在では、市内のセンター数は一九カ所、七四六レーンに達した。入場人員は年々数を増し、年齢層も広がって、推計ではあるが、昭和四十年度は、延べ五三万人、四十五年度は、延べ六〇〇万人と急増したが、四十六年度は、逆に四二〇万人と下降線を辿りはじめた。最近では、ブームも下火になり、また、施設供給の過剰もたたり、入場者の動員力において、先行き不安がもたれている。

 経済企画庁が毎年三月と九月に、独身者に対して行っているレジャー調査によると、昭和四十六年九月の結果では、ボーリング 五〇・八、パチンコ 三八・八、ドライブ 三〇・九、マージャン 二五・二、観光旅行 二二・一、ハイキング・登山 二〇・五、競馬・競輪 九・六、ゴルフ 七・五、魚釣り 七・五の各パーセントを示している。これは全国的な傾向であるが、千葉市においても同様な傾向がみられよう。

 六―一五六表は、昭和四十六年度における市内の風俗営業等を、県との比較においてまとめたものである。

6―156表 千葉市内における風俗営業等の状況(昭和46年度)
種別風俗営業深夜飲食店興行場(トルコ風呂)個室付浴場サウナ風呂モーテルボーリング場
警察署キャバレー料理店バーナイトクラブダンスホール低照度飲食店区画席飲食店麻雀店パチンコ店射的店スマートボール店その他
千葉中央署管内17122461030010321001728729225103011
千葉南署管内15631000013900011019600031
18178492030011630001838925225103312
県全体582,5421,7367207338823013465,0142,33823484826485
県全体に対する割合
(%)
3172801500301300171740952211314

(『防犯少年課関係統計資料』県警昭46年度)

 射倖、官能の欲求充足を目的とした娯楽は、盛り場を華やかにいろどる風物であるが、表にみられるとおり、県全体に対して割合の数値の高いものは、個室付浴場(トルコ風呂)五二パーセント、深夜飲食店 四〇パーセント、キャバレー 三一パーセント、バー 二八パーセント、サウナ風呂 二一パーセントなどであり、魅惑にみちた都会の夜の顔をのぞかせている。これらは、国鉄千葉駅・京成千葉駅の間近かに位置する栄・院内・富士見・本千葉の各地域に集中しているが、最近では、周辺へと広がりをみせている。

 近時、産業公害や都市公害が問題とされるにつれて、太陽と緑とを求めての清遊娯楽が盛んになってきた。市では、施設・設備の充実整備につとめるとともに、モデルコースを設定し、市民の参加をすすめている。

 一 北部コース

 国鉄千葉駅――千葉公園(ボート・大賀はす養殖地)――護国神社(六万余柱の英霊をまつる)――大日寺(千葉氏十六代の墓)――浅間神社(安産・子育ての守護神)――昆陽神社(青木昆陽の芋試作地)――長胤寺(夫婦梅)――花島観音(釣り場)――県総合運動場・中央技能センター。

 二 中部コース

 国鉄千葉駅――千葉神社(千葉氏の守護神)――加曽利貝塚(貝塚博物館)――御成街道(徳川家康鷹狩の往還路)――金光院(徳川家康鷹狩の道中休所)――栄福寺(妙見縁起絵巻)――妙興寺(極彩色の仏像三〇体)――泉自然公園――乳牛育成牧場公園

 三 南部コース

 国鉄千葉駅――千葉市郷土館(千葉市の今昔)――千葉寺(市内最古の寺院・大いちょう)――千葉港(国際工業港)――京葉臨海工業地域(金属・石油化学コンビナート)――本行寺(戦乱の期に安房・上総に通ずる関所の役割りをしていた寺院)――弁天池(生実城の外堀跡・釣り場)――重俊院(森川藩主代々の墓所)――長徳寺(市重要文化財指定の梵鐘)――斥候の松(戦国時代、足利義明の居館小弓御所の物見に使用した松)――大巌寺(室町時代の開山、徳川家康の選定した関東一八檀林のひとつ)

 この三つのコースは、さわやかな風と緑にふれながら、千葉市の歴史の跡を探訪し、また、近代都市へと脱皮しつつ現在の姿をさぐるということからも、家族の行楽のコースとして最適である。

 今日、テレビ・ラジオなどのマスメディアの発達により、さまざまな娯楽は容易に茶の間に入りこむ一方、交通機関の発達は人々の移動をたやすくし、娯楽はますます大型化し、大衆化してきている。都市は職場と住宅とが分離されており、労働時間と自由時間とが明確であって、個人の時間を自由に消費、享受できるだけに、娯楽のもつ価値を選択し、有意義に余暇をすごす技術と態度とがますます必要とされてきているであろう。