年中行事には大きく分けると次のような種類がある。
(一) 年間を通しての神の往来に関する行事。例えば正月や盆
(二) 生産活動がより豊かな実りに結びつくように、季節的に行われる直接農作業(ほとんどの場合が農作業であるが、地域によっては、漁業や林業、養蚕に関するものも含まれる。)にかかわる行事。例えば、害虫の防除・風災・旱魃を避けるための行事
(三) 農耕を始めとする生産活動と神との関係において執り行う水口祭とか刈上祭などの行事
(四) 村落共同体の一員として個々の家や神社の境内において実施される恵比須講や、子安講など、生活上の行事
(五) 以上のどれにも属さない行事
というように五つに分けられる。
ここでは本市の諸行事を考察することによって、遠くは、それらが、日本人の物の感じ方とどうかかわっているのか、また、元来の型は、どのようなものであり、それが、どのように地域的に伝播し、時間の流れの作用や、その地域の条件の中で、どう変化したものかを知るための一段階としたい。
昭和四十七年三月に実施した本市全域の年中行事等の調査結果によると、次のような傾向が読み取れる。まず比較的近年まで、もしくは現在に至るまで昔の風習、行事を残存させている地域として幕張・武石・長作・稲毛・畑・検見川地域、小仲台・園生・宮野木・源・東寺山・高品地域、犢橋・内山・横戸・花見川・長沼・長沼原・宇那谷・六方小深・若松地域、誉田・高田・平山・辺田・鎌取地域、上大和田・越智・大木戸・高津戸・小食土・下大和田・板倉地域などがある。その中でも特に残存の状態が良い地域の条件としては、新興住宅地ではなく農業を生業としており、中心街からやや離れて位置している所ということである。
また、現在ないし、つい最近まで盛んに実施されていた行事としては餅搗き・七草がゆなどをはじめとする正月関係の行事、田植え・収穫に関するもの、盆行事、信仰にかかわりのある講や参詣では、恵比須講・子安講・伊勢参り・金毘羅参り・善光寺参り・大師参り、更に道祖神や歳神、人の一生の儀礼では、みつめ祝い・初宮参りなどがあげられる。
村落共同体の解体とともに、農作業そのものに直接付随しておらず、村全体で執り行われなくても個々の家庭ないし、仲間内で単独に実施されうる行事が存続したと言ってもよいであろう。