かつては、かなり広範囲にわたり実施されていたと見られる年中行事を一覧にしたのが、次の表である。
現在、暦については、新暦・旧暦・中暦(旧暦をそのままひと月遅れにしたもの)の三種類が混同されて使用されているが、ここでは調査によって収録した月日をそのまま記した。
日 | 行事 | 行事の要領 |
1 | 若水汲み、初もうで、寺年始(坂月) | 大正月の入り、身を浄めて、年神様を迎える |
2 | 仕事始め、初荷、書き初め、初観音(武石) | 新年の初仕事や、そのための儀礼を行う。 |
3 | さんがにち | 元旦からこの日までを言う。 |
4 | 新婚者の年始(坂月) | 新婚者は日帰りで、実家へ年始に行く。 |
6 | 松納め、飾り納め | 松飾りをとる。この日で大正月が終了 |
7 | 七草、七草粥、菜めし(内山)、寺年始の返礼(坂月) | 年中、無病ですごせるように七草粥を食べる。 |
11 | 蔵開き、鏡開き | 蔵をあけ、家内の繁栄を祈る。 |
14 | きわだ餅、なるき(土気)、ほっこつほほ(上、下大和田)、ならせ餅(武石、泉)、餅ならせ(坂月) | 繭玉(繭の豊収を祈るのが元来の型のようであるが)を木にならせる。現在では五穀豊穣を祈願し、雑木に餅や団子をならせる。 |
14 | 若衆宿の仲間入れ | |
15 | どんど焼、どんどん(宮崎、検見川)、天神講まんぜろく(泉) | 小正月に行う火祭りの行事、火防・防虫・無病息災の祈りをこめて松飾りを集めて燃やす。 |
16 | 新婚者の泊り(坂月)、やぶ入り | 嫁や奉公人が婚家、主家から休暇をもらい家に帰る。 |
20 | 鉦起し(内山、院内)、太鼓起し(土気) | 一年の念仏始めの日 |
恵比須講(内山、坂月、武石、院内) | 恵比須神の祭、金銭的に繁栄を祈るようになった。 | |
お備謝(坂月、土気、大金沢)、馬のお備謝(土気) | 祭日、村の会食。一月は一年の神事の始まりであり、当番の交代、新加入者の行事も行う。 | |
22 | 千葉神社の奉謝 | |
24 | 歯黒神社祭(坂月) | |
4 | 節分、豆撒き | 立春の前日、大寒の末日に邪鬼の侵入を防ぐため豆撒きをする。 |
初午 | 二月最初の午の日を稲荷の縁日として祝う。 | |
8 | ちゃわび(土気)、疱瘡のむながし(大金沢) | 子供の病気除けの行事。武石で九月に同様の行事が見られる。 |
11 | 春祭、お奉謝祭(武石)、子安講(土気) | 犬の供養をする女の人の講の集まり |
12~14 | おひやり(泉)、ひやり(武石) | 若者組の仲間入り |
15 | はりぎどう | |
20 | お備謝(泉) | 一月の項参照 |
25 | 〃 (大金沢) | 神事当番の交代期、前年の決算期 |
3 | 雛祭 | 女の子の節句 |
ばかん様(泉) | 風の神様の祭り | |
8~9 | 念仏講(武石) | |
15 中日 | たなばらい(武石、土気) | 種籾の発芽を助けるため、何日か池水に種籾を浸すときの浄めの儀式 |
18 | 観音まち、こんぶくろ まち(大金沢) | 観音様の祭りで日待ちをする。 |
19 | 春び(ぎ)どう(野呂) | |
20 | 彼岸 | |
27 | おこもり(内山) | 十膳講、大師講でおこもりをする。 |
28 | あさひ講(土気) | 御題目講 |
子安講(内山) | 二月の項参照 | |
8 | 灌仏会 | 釈尊の誕生を祝う。 |
13 | 古峯講代参出立(内山) | |
18 | 榛名、古峯、三峯代参出立(武石)、花島講、観音講、元観音講(内山) | |
20 | 春祭(土気) | |
たな池(坂月) | 籾を冷やす。 | |
28 | 種蒔き祝(土気、坂月) | 苗代に種籾をおろしたときにする祭。五月に入ってからの地域もある。 |
みのて祭(大金沢) | ||
5 | 端午の節句 | 男の子の節句 |
8 | しゃかねぶつ(武石) | 釈迦念仏の意で、年寄が釈迦堂で念仏を唱える。 |
せんど祭(院内) | 火除けのための儀式 | |
30 | さんぼどり(坂月) | 田植祭のことか。 |
1 | 竹の子のついたち(土気) | この日以後は竹の子を食べない。 |
初旬 | みのて祭(院内) | 害虫防除の祭りと言っているが、本来は四月の項参照 |
15 | 麦いり十五日うどん講(土気) | 新麦の収穫を祝う祭 |
~25 | そうり(内山) | 田植の開始を祝う祭 |
おお田植(坂月) | 田植そのものをさす。 | |
25 | 手休め(坂月)、さなぶり(土気、内山) | 田植終了後の祝い |
八坂神社祭礼、天王様大祭(野呂) | ||
30 | くろよせ(内山、武石、坂月) | 田植で世話になった人々へお礼をする。 |
7 | 七夕 | 陰暦七月七日の行事 |
天王様の奉謝(大金沢) | ||
10 | 寺なぎ、精霊ぶしん(土気) | お盆の準備の草取り、掃除をする場所により何々なぎと言う。 |
14か15 | 宮薙ぎ十五日(内山、武石、坂月、土気) | いずれも前項参照 |
道薙ぎ(土気) | 精霊(御先祖様の霊)の通り道をきれいにする。 | |
麦いり十五日(坂月) | 六月の項参照 | |
10~20 | 稲虫送り、虫送り | 子供の行事となっていった。田の虫を追い出す行事 |
中旬 | 土用の入り | 立夏の前日 |
土用の丑の日 | 暑さに向い丑の日に特別の物を食べる。 | |
27 | 新箸、にいばし(内山、泉)、新箸祭(坂月) | すすき使用解禁の日。本来は稲田の青いころ無事豊作を祈る行事 |
28・29 | 大山参り出立(武石) | |
30 | 戸隠講代参出立祝(内山) | |
1 | 釜の蓋のついたち(坂月、土気) | 地獄の釜の蓋が開く日。精霊の旅出つ日 |
6 | らんとなぎ(大金沢) | 墓の掃除、墓地の棚つり |
7 | 七夕流し(内山) | 月遅れ七夕、まこもの牛馬を川へ流す。 |
6か7 | 盆準備開始 | |
7 | 堂薙ぎ | 寺墓の掃除 |
16~22 | 千葉神社祭礼 | |
27~28 | 浪切不動の縁日 | |
31 | 宮酒盛(内山)、前祝い(坂月) | 二百十日の安全を祈る。 |
1 | おこもり(武石)、かざまち(大金沢) | 二百十日の厄除け祈願 |
2~10 | ぶなんびまち(坂月) | |
刈り上げ(坂月) | 十月の項参照 | |
12 | 御難(ごなん)の牡丹餅(土気) | 日蓮が滝の口での災難(切られようとした)を避けられたことの記念 |
15 | 主人の月見(土気)、十五夜祭(坂月) | 旧暦八月十五日、満月を祭る。 |
風祭(かざまつり)(多部田) | 二百十日の無事を感謝する行事 | |
お念仏(内山)、道祖神祭り(千葉寺) | 念仏講の集まり | |
19 | 風祭(野呂) | 十五日の項参照 |
29 | 屋敷神祭(院内) | 各戸で屋敷神を祭る。 |
20前後 | 刈り上げ祭 | 期日は場所、年によりまちまち。収穫に先だって行われる予祝的行事、収穫祝 |
23 | 三夜講、十三夜祭(坂月、野呂)、嫁の十三夜(土気) | 十三夜、二十三夜の月を嫁が見ることから始まった講の日 |
29 | 神のお立ち(泉、土気) | 神が出雲に集まるため、出立する日 |
稲荷まち(大金沢)、氏神の祭(坂月) | ||
9 | くよねぶつ(内山) | 供養念仏のこと |
鉦伏せ、(院内) | この日から翌年の鉦起しの日まで鉦をつくのを休む。 | |
15 | 太鼓納め(土気) | 最後のお題目講、内容は前項に同じ。 |
紐解き、七五三の祝い | 十二月に行う地域もある。七、五、三歳の子供の祝い | |
紐解き祝い | ||
20 | 恵比須講 | 一月の恵比須講のお礼、家業繁盛に感謝 |
29 | 神のお帰り(土気) | 神が出雲から帰る日を祝う |
22 | 冬至、ゆず湯 | 冬至の日にゆず湯に入る。 |
28 | すす払い、餅搗き、お飾り作り | 元来、正月の準備は十三日からであったが月末に移った。 |
30 | お松たて | 餅つきの後に行う。 |
31 | 晦日、おたきあげ(武石、坂月) | かがり火をたいて正月をむかえる行事 |