八剣神社の神楽神事

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 南生実町本郷に鎮座する八剣神社は日本武尊を主神として、天照大神、大己貴命を合祀している。特に東国鎮護の武の神様として、創建以来多くの人々の信仰を集め、寛弘年間(平安時代)には、源頼光が上総介に任ぜられて赴任の途中参詣して武運を祈願したり、江戸時代には、徳川氏が朱印地を寄進している。

 祭礼は七月二十七日、千葉市指定無形文化財である神楽舞を中心に行われる。

 八剣神社に伝わる神楽舞は、原則として、旧家の長男によって継承され、巫女舞、湯笹の舞、猿田彦命の舞など、十二座を主とするものである。

 この神楽舞は、旧記によれば「はらいことば」の中に「乙女子が舞の真袖の袖しが浦の」とあり、創始年代近くの舞の記録とされている。また、享保元年(一七一六)十二月二十二日、社殿再建の遷宮式のとき、二日間にわたって神楽祭りを執行したということが当時の棟札の記録によってわかる。このとき、上総一宮玉前(たまさき)神社の神楽社人、鎌田式部、風代主税、宮本左門、風代数馬、高原兵部の六人が神楽を奉仕し、伝授したといわれているが、加納氏が一宮藩に転封されると、道具、衣類を与えて、鷲神社の系統に属する江戸神楽の楽人を招いて教授されたものと伝えられている。

 黙劇風の筋のはこび、老人面、神様面、おかめ面、ひょっとこ面、狐面などを用いて、能舞台を模した三方吹抜けの神楽殿で舞うことなどから考えると、現在では上総神楽というよりは、むしろ壬生狂言の影響を受けた江戸神楽の系統に属するものという説が認められている。