盆踊歌
○ 揃(そろ)った揃ったよ ほどよく揃った 稲の出穂より良く揃った
○ 盆の十四日に おどらぬ者は 木仏(きぶつ) 金仏(かなぶつ) 石仏(いしぼとけ)
○ 千葉の妙見寺のくじゃくの鳥が 稲穂くわえて 羽根ばたき
○ 千葉の名所は いのはな山よ 少し下れば 大和(やまと)橋
○ この夜踊りに まどわぬ人は 木仏 金仏 石仏
○ ここと千葉とが海ならよかろう かわい あの娘(こ)が舟でよぶ
○ 佐倉宗五郎 子別れよりも わたしや貴女(あなた)と 別れが辛(つら)い
○ かわい あの娘(こ)を 千葉によ置いて 私し 太田(おおだ)で 苦労する
(以上 坂月、太田地区)
○ おどりよ―― けすなよ―― 夜明け鴉(がらす)の啼(な)くまでも
○ ぼうさまほう―― 蜂にさされてよ―― 医者がたまげてさじなげた
○ 園生(そのう)の久右エムの西瓜(すいか)は真白西瓜 それで千葉へ持っていったら
三貫三百三十文だよ――
○ おどりおどるなら 品よくおどれ 品のよいのを嫁にとる
○ 盆の十六日にや いなびかびっかり 雷ごろしゃらえ――
(以上 園生地区、吉田公平 談)
○ 坊さまな山の道じゃ衣かすれる 衣はよ いくらすれても身はすれぬ
○ 障子あければ 院内よ むしろばたしのちょいと音がする
○ 揃った揃ったよ踊りこが揃うたよ 稲の出穂より よく揃ふた
○ 千葉の名所は 猪鼻山よ 向こうを眺めりゃ 袖が浦
○ いつか六月 千葉の祭り 稲がそよそよ 秋がくる
○ をどりけすなよ 夜明けまでも 夜明烏の あら鳴くまでも
○ 千葉と千葉寺 とよ竹かけて 水の便りを送りたい
○ 五田保(ごたつぽ)お稲荷さまは 赤いもんが好きだ 染めてやりたい べにがらぞめに
○ おれと やァべ やァべ 小仲台の せがけ せがけ もどりも 二人づれ
(以上 院内地区・和田茂右ヱ門 談)
○ 切れた切れた 人前ばかり 水に浮草 根は切れやせぬ
○ 盆だ盆だと 今日の日ばかり 明日は野山の 草刈りに
○ 千葉は千葉寺の やぐらの太鼓(たいこ) いくらたたいても 夜は明けぬ
○ 米のなる木で作りし わらじ 踏めば小判の あとがつく
○ 田植すんだら 娘も嫁も 笠は かかしにやる心
○ 千葉と成田の境の芝を 可愛い女に ふませたい
○ 高津出るときは 涙で出たが 今じゃ 高津の風もいや
○ 盆の十三日に 出さない親は 親がじゃけんか 子が無理か
○ 心変えるな 世が変わるとも 梅が桜に 変わるとも
○ 私しゃ 野に咲く一重の桜 八重に咲く気は さらにない
○ おらが坊やは 三月生まれ 道理で お顔が桜色
○ 五月(さつき)田植に 泣く子がほしい 畦に腰かけ 乳のます
○ 死んでしまをか 穴川へ出ようか 死ぬにやましだよ 出たがよい
○ 人のきらいし 穴川さへも 今じゃ 都の花が咲く
○ 登戸 宮野河岸 遠浅なれば しゃみや太鼓で 舟つなぐ
○ 天神山 もとをただせば鬼が出る 今は女郎部屋で 繁昌する