生実町(おゆみちょう)

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 南生実町の項でも述べたように、生実町と南生実町とは、始めは一村であって、麻績連(おみのむらじ)とその部民が住みついたようで、この麻績(おみ)が「おゆみ」に転化し、寛弘年中、源頼光が上総の国へ赴任の途中、八剣神社に参詣して、大弓を奉納したことにより、「大弓」という漢字が当てられた。

 建久八年(一一九七)、いまは廃寺となっている勢国寺が、小弓村に創建されていた。

 年代ははっきりしないが、南北小弓村に分村しており、天文二十年(一五五一)北生実村を分村して、大厳寺の寺領に寄附して「生実郷(大厳寺町)」と名付けられた。

 諸書に出てくる当町の町名を見ると、「おゆみ」という読み方に変りはないが、次のような漢字が当てられている。

 御弓、大弓、小弓、北小弓郷、北小弓、北大弓、北生実、生実町。

 当町は、寛永二年以後、森川一万石の城下町であって、古くは、千葉家の一族・原家の居城跡で、足利義明もこの地に居城していたので、「小弓御所」の名もある。なお、「小弓御所」は、現在の南生実町にあった。


挿図43 森川城址 生実町

 いま、金石文、古文書からみた村名をとりあげてみると、寛弘年間(一〇〇四~一〇一一)源頼光、八剣神社参詣後は「大弓」と呼ばれたと伝承している。また、建久八年(一一九七)に、勢国寺(いまは廃寺)が小弓の地に創建され、正平八年(一三五三)には、威光院(いまは廃寺)が小弓村に創建されたとも伝えられている。『生浜町誌』(1)には、現在臼井町にある宗徳禅寺が、応永二年(一三九五)に小弓村椎崎に創建されたとある。

 本行寺所蔵の古文書に、「文明五年(一四七三)、日泰上人妙印寺・本満寺の両寺を小弓村に建立す」とある。また、『千葉郡誌』(2)によれば、「大永三年(一五二三)、上総国真里谷の城主・竹(武)田豊三、三河守足利義明を援けて、下総生実の城主・原氏を攻む」とあり、天文二十年(一五五一)には、北生実村より生実郷を分村して、大厳寺に寄附し、永禄二年(一五五九)には、大厳寺の開山道誉貞把が、小弓村に地蔵堂を建立している。『森川家系譜』(3)の重俊の項に、「寛永二年(一六二五)生実に采地を賜わる。寛永三年(一六二六)野田を合せて、一万石を領し、生実に住す」とある。


挿図44 森川山重俊院山門・本堂 生実町

 ○宝暦十二年(一七六二)五月   河戸村午年宗門御改帳・川戸町鈴木家蔵     北生実村

 ○明和二年(一七六五)八月    生実町柏崎の池畔にある道標銘文         〃

 ○明和五年(一七六八)十月    御触書写帳                   〃

 ○安永三年(一七七四)四月    南生実村御改宗門下帳・浜野町宍倉家蔵      〃

 ○安永三年(一七七四)十月    小金一件諸入用割合控・刈田子町高梨家蔵     〃

 ○安永四乙未年(一七七五)三月  宗門御法度書・高梨家蔵             〃

 ○寛政七卯年(一七九五)正月   乍恐以書付奉願上候(小金原鹿狩人足の件)・高梨家蔵  北小弓村

 ○寛政七卯年(一七九五)正月   日記(小金原御鹿狩勢子人足割の事)・高梨家蔵  〃

 ○文化二年(一八〇五)八月    生実神社の鳥居銘文              北生実村

 ○文化八年(一八一一)五月    南北両生実村水論済口証文・高梨家蔵       〃

 ○文政三年(一八二〇)四月    差上申一札之事(泉谷出水の事)・千葉市浜野支所蔵  〃

 ○文政六年(一八二三)      議定証文之事(助郷の事)            〃

 ○天保八酉年(一八三七)十二月  為取替申水砂野議定書(境出入の事)       〃

 ○天保九戍年(一八三八)四月   御領分田畑高反歩取調控帳・高梨家蔵       〃

 ○天保十四卯年(一八四三)十月  人馬助合一件(訴訟の事)・星久喜町深山家蔵   〃

 ○嘉永元申年(一八四八)九月   覚(村高取調の事)               〃

 ○嘉永二年(一八四九)七月    生実町妙印寺(現在は廃寺)の半鐘銘文      〃

 ○安政二卯年(一八五五)三月   乍恐以書付奉願上候(水砂野野火の事)      〃

 ○安政六年(一八五九)九月    御年貢早納一件済口議定書・高梨家蔵       〃

 これらの資料から、次のことが考えられる。麻州麻績(おみ)から「おゆみ」と変り、大弓村、小弓村、生実村と変り、明和二年から北生実村となり、寛政七年には、北小弓村となった。その後は、再び北生実村と変り、千葉市に合併直後から生実村と改められた。

 なお、生実新田塩田は、正保四丁亥年(一六四七)十月の本行寺と千光院の檀那論記によれば、「潮田」となっている。