江戸川区の仏像

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 区内の仏像は、大半が江戸時代以降の作と考えられますが、創建の古い寺院には、鎌倉時代の技法を伝えるものや、南北朝時代の作もあります。
 仲台院(西小松川町11-17)の木造阿弥陀如来立像は、鎌倉時代末から南北朝(14世紀)ごろの作と考えられます。鎌倉時代の康派とよばれる奈良仏師の作風をよく伝えています。明福寺(江戸川3-8-1)の木造親鸞聖人坐像も鎌倉から南北朝ごろの作と考えられます。ほぼ等身大の肖像彫刻で、写実性に富んでいます。江戸時代後期の彩色補修を受けていますが、本蔵寺(北小岩3-22-19)の木造日朗聖人坐像・木造日像聖人坐像の2躰も、室町時代作の秀れた肖像彫刻です。高さ35cmの小さな坐像ですが、日蓮高弟の面影をよく伝えています。
 優美さでは、誠心寺(江戸川3-50)の木造聖観世音菩薩立像が注目されます。長島の海中より発見されたと伝えられ、表面の彩色が失なわれて生地のままの姿ですが、やはり室町時代の作と考えられます。
 妙光寺(江戸川6-16)の木造日蓮聖人坐像は、台座の墨書によって文禄3年(1594)の作であることがわかります。現在の本尊である日蓮聖人坐像の胎内から発見されたもので、今は別に安置されています。
 最勝寺(平井1-25-32)の木造不動明王坐像は、江戸時代初期の作と思われます。もとは本所表町(墨田区)にあった東栄寺の本尊で、江戸五色不動のひとつ「目黄不動」の名で知られています。明治初年に同町内の最勝寺に移され、大正2年に現在地に移ってきました。坐像ながら像高も高く、都内でも有数のお不動様です。
 勝曼寺(新堀1-9-6)の木造阿弥陀如来立像も、江戸初期の作で、同寺開山の供養のために寄進されました。
 そのほか、区の文化財になっている仏像には、木造聖徳太子立像(明福寺)、木造薬師如来立像(誠心寺)、珍しい筋光背をもつ木造阿弥陀如来坐像(誠心寺)があります。
 これらは、区内の仏像のごく一部で、まだまだご紹介したい仏像がたくさんあります。いずれも信仰の対象として大切に守られてきたものです。それぞれ人間の姿をかり、人びとの「祈り」を受けとめてくれる、「慈悲」の心にあふれています。