日本刺繍

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   江戸川区指定無形文化財・工芸技術
   技術保持者      丸島玉恵
 
 刺繍の技法は、仏教伝来以前に、朝鮮半島を通じて日本にもたらされたという説もあるようですが、一般には仏教文化とともに大陸から招来されたといわれています。日本最古の作品として、奈良中宮寺の天寿国曼荼羅繍帳(国宝)が知られていますが、当時の作品は仏教の影響の強いものでした。平安時代には貴族文化のなかで広がり、鎌倉から室町にかけてはその技法が飛躍的に発展しました。桃山時代には、能装束や小袖に華麗さを競うようになり、江戸時代にいたって精緻な、洗練された技法として完成されました。刺繍による作品には、刺繍のみで構成されるものと、染めや絞りなどと併用されて構成されるものがあります。これらは、各時代の風潮や趣好によって選択されたようです。
 丸島玉恵さんは、1925年(大正14)生まれ。高等女学校時代の3年間、正課で刺繍を選び、この世界に入りました。
 1949年(昭和24)、日本刺繍の今井むつ子さんに師事、3年間ここで学びました。その後、石井やす子さんに1年半ほど学び、1975年斎藤磐さんの日本刺繍紅会で実技のほか理論面も学んで、1979年に日本刺繍紅会から教師免許を受けています。その後、斎藤氏の弟子石川清治さんに師事し、1985年現住所に日本刺繍めぐみ会を設立。教室を開き、後進の指導にあたり、現在に至っています。
 江戸川伝統工芸保存会会員。1983年(昭和58)、江戸川区美術会の作品展に初出品で努力賞を受賞。同年、第36回東京都勤労者美術展入選。1989年(平成1)、江戸川伝統工芸保存会の第7回伝統工芸展で江戸川区長賞を受賞しています。
 創作にあたっては、下図の制作から始まります。すぐれた下図と優れた刺繍の技術が一体になって、はじめてその造形美が生きてきます。
 下図が完成したら、その表現に適した布地を選びます。布地の地色と使用する糸の色の調和が命です。
 布を刺繍台に張ります。糸は撚りのかかっていない釜糸とよばれる絹糸を用途に応じて撚ってから使用します。針はおよそ18種。すべて自分で加工しています。
 刺繍の技法は、点を表すもの、線を表すもの、面を表すものにそれぞれ数種の基本技法があり、その応用技法は100種から300種に及ぶといわれています。