わが町葛西の方言 七

 最近、若い人たちの会話で、
 「行くジャン」
 「見たジャン」
 「食べるジャン」
 など、「ジャン 一覧161」という語を盛んに使っているのを耳にする。主に動詞の下に付けて語尾を上げて発音することが多いようだ。
 或る老人が「国籍不明の語」と言っていたのを思い出す。確かに標準語で「ジャン」という語は無い。学校でそういう語を教えているとも聞いたことはない。国籍不明かもしれない。
 ところが、葛西では遠い昔から何の抵抗もなく「ジャン」を使ってきた。但し、私たちの使う「ジャン」は総て語尾を下げている点で最近の若い人たちとは違う。葛西弁では、この「ジャン」を目上の人と目下の者への二通りに使い分けている。
 つまり、目下の者へは「ジャン」だけで、目上の人には「ジャン」の下に「か」を付けて「ジャンか」と用いる。
 その意味は
 
A 「・・・・じゃないか」
  「・・・・しようじゃないか」
B 「・・・・じゃありませんか」
  「・・・・しようじゃありませんか」

 
 で、Aが目下の者への「ジャン」、Bが目上の人への「ジャンか」である。
 これを具体的な言葉として使うとすれば、

A 「行ったベジャン」(行ったじゃないか)
  「食ったベジャン」(食ったじゃないか)
  「行ったベジャンか」(行ったじゃありませんか)
  「食ったベジャンか」(食ったじゃありませんか)
B 「行くベジャン」(行こうじゃないか)
  「食うベジャン」(食おうじゃないか)
  「行くベジャンか」(行こうじゃありませんか)
  「食うベジャンか」(食おうじゃありませんか)

 
 これで判かるようにAは過去のことを言っており、Bは勧誘の場合で英語の「レッツ」に相当する。
 とにかく、私たち葛西人は幼時から使っている言葉なので「国籍不明」とは思わないが、若い人たちが語尾を上げて言う「ジャン」は私たちと違った使い方であるようだ。
 いずれにしても、方言は方言として大切にしなければいけない。それを面白半分で標準語に割り込ませようとすると、標準語の乱れを起こしかねない。方言の分野でも迷惑を蒙るようになる。