装身具(アクセサリー)

多くの装身具を身につけて埋葬された
 出土した漆製品の数は、120点を超えます。ほとんどは墓の底に納めた副葬品で、全体の8割は4基の合葬墓から見つかりました。種類は、櫛、髪飾り輪、額飾り輪、耳飾り輪、髪飾り紐(リボン)、胸飾り、腕輪、腰飾り帯など、実に多様です。

 合葬墓には、一人に多くの装身具がそえられていました。腰飾り帯は、119号と123号土坑墓から各1点出土し、118号土坑墓からも漆を塗ったものではありませんが、サメの歯をたくさんつけたと推測される帯があります。腰飾り帯をまとった被葬者は特別な人物だったのでしょうか。
 
 副葬品の出土状態を観察すると、どの種類の装身具を身体のどこにつけたのか推測できます。祭りや儀式などの特別なときだけとは限らず、何種類かは普段の生活でも身につけていたのかもしれません。
 


 
頭のアクセサリー
118号土坑墓 119号土坑墓 123号土坑墓
首から胸のアクセサリー
118号土坑墓 119号土坑墓 123号土坑墓
腕のアクセサリー
118号土坑墓 119号土坑墓
腰のアクセサリー
119号土坑墓 123号土坑墓

 

頭のアクセサリー
 漆塗りの櫛は、髪をすいて整えるために使われますが、髪飾りとしての用途を兼ね備えたものです。縄文時代の櫛は、横長(横櫛)ではなく縦長の櫛(竪櫛)です。櫛の歯は今は腐って消えていますが、下端が丸くとがった細い棒を12〜14本ほど並べ、上端の方でこれを結びあわせてから、そこへ漆をかけてかため、「山」を作り出したものです。櫛の「山」の形や透かし模様にいくつか種類があり、最もポピュラーな櫛は生き物の顔をイメージして作られたかのようです。


 櫛だけではありませんが、出土した漆製品の色には、赤色のほか、オレンジ色やピンク色もあり、ひとまとめに「赤色」と呼べない色をしています。
 漆塗りの髪飾りには、櫛のほか額や髪を飾る漆塗りの輪があります(119・123号墓の漆製品が密集するところにある)。植物の表皮や茎などをまるく輪にしたものに漆をかけたもので、隣り合って4個見つかった漆塗りの輪(123号墓)は、連結されたひとつの飾りものと考えられます。「ヘッドバンド」のようなものにつけて使用した額飾りとみています。
 また、119号墓の漆製品集中部にある縮れたような漆塗りの輪は、髪の毛をまとめ、根本を留めた輪とみることができます。結った髪を想像させるものです。
 サメの歯は、額飾りのところからみつかったり(119・123号墓)、頭の付近に17個もまとまって並んでいたり(135号墓)するので、「はちまき」のようなものに1つつけたり、全体にいくつも飾りつけたものでしょう。また、118号墓では腰のあたりから小さなサメの歯がたくさん見つかっていますから、「帯」につけたか、服の裾を飾るために使ったのかもしれません。
 サメ・オオカミ・クマなどの恐ろしい、強い動物の牙や歯を飾りに使うのは、その強さを身につけて悪をよせつけないためとか、獲物に噛みついて離さないという牙の働きから、生命が体から離れることをくいとめるためともいわれています。
 サメの歯は強いエナメル質しか残っていませんが、消え去った歯根部に穴をあけて縫いつけたものと考えられています。
 漆塗りの耳飾りは、植物の皮などを束ねて輪をつくり、赤やオレンジ色の漆をかけたもの(119・123号墓の櫛や頭飾りの密集するところにある)で、おそらく耳たぶにあけた穴から紐でつりさげたのでしょう。このほか、118号墓には小さな漆の耳飾りもあります。
 
 漆塗りの櫛、髪飾り、額飾り、かんざし、耳飾りなどが出土しています。櫛は全て赤色漆塗りです。表面は朱や赤桃色に塗られています。カリンバ遺跡の櫛にはバラエティに富んだ美しい透かし模様が見られます。
 


 

118号墓出土


  

 


 

髪飾り
  

 


 

耳飾り
 

 


 

119号墓出土


 

 


 

髪輪、額輪


 


 

耳飾り輪、耳飾り

 


 

簪(かんざし)
  

 


 

123号墓出土


  

 


 

髪飾り輪、髪飾り紐
  

 


 

額輪

 


 

耳飾り輪

 


 


 

首から胸のアクセサリー
 飾り玉の首飾りは、滑石の玉が多く、コハクの玉がこれにつづきます。ヒスイの玉もみられますがごく少量です。粘土で作って焼き上げたもの(土製)もあります。滑石の玉とコハクの玉とをいっしょに連ねたり、滑石と赤い土製の玉を連ねて首飾りにしたものもあります。

 玉の形は、球(丸玉)、円板(平玉)、ナツメの実形(棗玉)、勾玉といろいろです。
 土製の玉は、ソロバン玉の縁に刻みをつけたような花弁形に作られ(蜜柑玉)、表面を赤く塗っています。同じような玉は、市内の柏木B遺跡や苫小牧市柏原5遺跡、静内町御殿山遺跡などでもみつかっています。このほか、大きなボタンの形の垂れ飾りがあります(30号墓)。
 漆塗りの胸飾りは、出土した場所をもとにそのように推定したもので、118号墓の渦巻き状に模様をつけた漆製品を一応ここに分類しておきます。
 
勾玉・玉
 玉の素材は、緑泥石岩、琥珀、滑石、翡翠、土。種類は、勾玉、臼玉、丸玉、棗玉など。連珠で見つかったものが多く、連珠のなかには勾玉を1点から数点連ねて使用する例もあります。首飾りとして使用するほか、ブレスレット、アンクレット、さらには頭部に着装してヘアーバンド風に使用する場合があったのかもしれません。

 


 

118号墓出土

胸飾り

  


 
玉、勾玉

 


 


 

119号墓出土


 


 

123号墓出土



 


 

腕のアクセサリー
 漆塗りの腕輪には植物の皮や茎、撚り紐、獣の皮など各種の材料に漆をかけた輪があるようです。櫛につづいて多くみつかりました。左右の上腕とみられるところから、赤い輪、黒い輪が両方から2個一組でみつかったり、左右からそれぞれ3個見つかったり(118号墓)しています。2個か3個をまとめて上腕につけていたことがわかります。

 これらの腕輪には、幾何学模様をつけたものや、穴のある突起、飾りつけをもつものもあります。さらに、オレンジ色の漆をかけた大きな輪の腕輪や、ピンク色の漆をかけた細い二連の腕輪もあります(119号墓)。
 飾り玉の腕輪は、丸玉をつらねて左右の手首につけたり、勾玉1つを手首に巻いたりしていたようです(118・119号墓)。
 
植物・獣皮素材のいろいろな腕輪
 カリンバ遺跡の腕輪は、植物の皮か茎を丸く輪にし、その上に撚糸を巻きつけたものや、草・樹皮を巻いたもの、獣皮を素材にしたもの、大きな輪、二重の輪などがあります。輪の表面に突起、ブリッジなどをつけて飾ったり、スリット模様をつけたものまで多種多様です。

 


 

118号墓出土

 

 


 

119号墓出土


 


 

腰のアクセサリー
 漆塗りの腰飾り帯が2つ(119・123号墓)見つかりました。衣服を腰で巻きとめた帯と考えられます。植物の細い茎かつるを数本並べた芯材を細い紐で縦に巻き付け、それにオレンジ色の漆をかけたもの(123号墓、推定全長約90cm)と、芯材はわかりませんが、こまかい文様を描いたもの(119号墓)があります。また、118号墓で見られたように、サメの歯をたくさんつけた腰の帯か服の裾飾りのようなものも腰のアクセサリーと呼んでいいでしょう。

 
 123号土坑墓の中央の被葬者に着装されたと考えられる腰飾り帯と腕輪、勾玉・琥珀玉の連珠。帯は、植物の細い茎を数本束ねたもので、遺体の胴部に巻いていたと推定されます。
 


 

119号墓出土

  

 


 

123号墓出土